小商圏の焼畑式営業の恐怖

短期間で売上げを伸ばすワナ

「チラシを撒くだけで売上げが2倍になります!」とか「販促必殺技!これさえわかれば売上げ倍増!」といったコピーが目に飛び込んでくるメルマガや広告が世の中には氾濫しています。

売上げに先行き不安を抱えた中小企業の経営者は、あまり予算を使わずにちょっとしたことで信じられない売上げが上がることを心の底から夢見ています。

そんな中小企業の経営者としては、喉から手が出るような文句を目にすると、興味はなくてもどんなものなのか、アドレスを思わずクリックしてしまいます。

一見、簡単に売上げが上げられそうなそんなキャッチには重大なワナが仕掛けられています。

イメージ広告とレスポンス広告

あなたは、イメージ広告とレスポンス広告の違いをご存知ですか?
イメージ広告というのは、ブランド広告とも言われ、おしゃれなイメージの広告です。

このイメージ広告では、数値化された情報を提供したり、多くの情報量を提供したりするというよりも、シンプルで会社のイメージや商品のイメージを、抽象的何か言葉やイメージでビジュアル的な情報として提供するものです。

これは企業ブランディングのための1つの手法で、企業イメージをアップさせるためや、商品をイメージアップさせる際によく使われているものです。

一方、レスポンス広告と言われるものは、通信販売会社やスーパー、不動産会社のように実際にお店にご来店いただいたり、商品を買っていただいたりする見込み客の人を対象にして、広告に反応してもらい何かしらアクションのレスポンスを期待するものです。

これは反応(レスポンス)が良いか悪いかがはっきりする広告です。
レスポンス広告は、その広告によって売上げアップや来客数アップが期待できるものなのです。

イメージ広告というのは、その広告ですぐに売上げが上がるとか、来店客数が増えるとかという成果が期待できないユルイ広告ですから、イメージ広告をするには、会社に経済的な余裕がないとなかなか難しいものです。

ですから、おもに中小企業が普段利用している広告は、具体的な反応を期待したレスポンス広告ということになります。

もっとも最近ではこのイメージ広告とレスポンス広告の間を埋めるレスポンスブリッジ広告と呼ばれるものが登場していますが、今回は広告についてのお話ではないので、このレスポンスブリッジ広告については触れません。

どんどん強さが求められていくレスポンス広告

「売上げアップします」系の広告は、まさにレスポンス広告の導入広告なわけです。

しかしここで、中小企業の経営者の皆さんに気を付けていただきたいことがあります。レスポンス広告というのは、中小企業の売上げアップ、集客アップに薬として機能する場合もありますが、毒になる場合もあるということです。

現代の中小企業経営者は、このレスポンス広告について勉強する必要がおおいにあります。単に「広告の費用対効果を」と、広告の反応を上げようとして無差別にレスポンス広告を打ち続けると、ちょうど痛み止めの鎮痛剤を打ち続けるともっと強い薬でないと効果が無くなるのと同じように、やがて効き目が落ちてきてしまいます。

しかし、このレスポンス広告を勧める業者は、だいたい2パターンに分離されます。レスポンス広告の制作に関するコンサルティングやセミナーで高額な費用を荒稼ぎするところと、実際にコンサルティング付きで制作まで引き受けるところです。

当然、まともなレスポンス広告のコンサルティングや制作を生業として真面目に取り組んでいるところも多いのですが、とくに過激な反応率や劇的なレスポンスを売りにしている業者には気を付けたいものです。

地方に本社のある従業員20名ほどのリフォーム会社の社長のお話ですが、この会社ではここ数年前まではそれほどチラシや折り込み広告を入れなくても、地元に根差した地道な営業活動で、仕事を継続的に受注して堅実な営業をしてこられました。

しかし数年前から、ある販促コンサルタントと称する人に、地元での売上げアップと知名度向上のために、広告配布のコンサルティングを依頼したそうです。

2年ほど前からそのコンサルタントの指導によって広告を開始しました。
当然、それまで地元で広告やチラシなどを配布したことがなかったので、チラシを始めた当初は反応が良く、問い合わせ件数も多く、仕事への依頼も、今までにないほど増加したそうです。

しかし、広告開始から1年ほどが経つと、同じようなチラシを配布しても今までとは打って変わって、ピタリと問い合わせも来なくなってしまって、青ざめてご相談に来られました。

レスポンス広告の特徴を理解しないと、こういった状況になってしまうことがよくあります。

つまり、特定のエリアで反応率を高めるためのレスポンス広告を打ち続けていたので、始めは反応が良かったのですが、それを続けたことによって、レスポンス広告としての効果が徐々に減ってしまったのです。

お客様から見ても、はじめは今までみたことのない情報だったので、好奇心もあり、問い合わせをしてきたりする人も多かったわけですが、これが恒常的になってしまうと「あ、またいつものリフォーム屋さんのチラシね」となっていってしまったわけです。

目先の売上げよりも顧客関係維持を

実際にこの手の例は少なくありません。レスポンス広告でチラシを撒き続ける前に、問い合わせをしてくれたお客様とどんな絆や関係性を構築していくのかという「顧客維持」、つまり「顧客生涯価値」を提供できるサービスを組み立てる必要があるのです。

そして、会社としてのメニュー構築などのビジネスモデルを考えておく必要があったわけです。

問い合わせをいただいた方に対して提示していくメニューが、売り切り御免の前世代型の営業クロージングになっていると最悪です。

誰もいない農園で一時的には甘く美味しい木の実を一人占めしたような状態になり、ライバルが見当たらないわけですから、木の実は取り放題なわけです。

しかし、調子に乗って木の実を取り続けると、次第に木の実が枯渇していき、やがてはすべてを取りつくしてしまいます。

次に木の実を取ろうとしても、来年の木の実がなる季節まで時間をかけて木の実を育てないと、何も取れない状態になってしまいます。

それはまるで、焼畑式農業をしているようなもので、一度畑を焼いてしまったところはしばらく休耕畑にして養生させて、その土地が元気を取り戻すまで、しばらく時間をおかなければいけない状態と似ています。

先ほどの販促コンサルタントに、何も知らないまま売上げが上がると言って何気なく勧められたレスポンス広告も、まさにこの焼畑式農業の状態です。

とくに地方都市の場合はレスポンス広告に対する反動も大きく、一度特定のエリアで焼畑式営業をしてしまうと、チラシや新聞の折り込み広告なので再びレスポンスを上げることは、初めてチラシを撒くときよりも大変なことになってしまいます。

短期間で目先の売上げを上げたいという思いで、レスポンス広告を打ち続けるリスクに気が付かず、焼畑式営業をしてしまったのが、前述のリフォーム会社の社長なのです。

一度、焼畑式営業をしてしまうと、しばらくはその地域での広告は控えて、少し地域をずらしたり、客層のターゲットを変えるなどということをしない限り、見込み客開拓が思うようにできなくなってしまいます。

レスポンス広告をするときには、焼畑式営業にならないように気を遣って計画を立ててください。

レスポンス広告をするにしても、問い合わせのあった見込み客に対して、そこを入り口にするフロントエンド商品から固定客、しいては優良客になっていただくためのバックエンド商品までメニュー化して揃えておきたいものです。

決して一発クロージング勝負の焼畑式レスポンス広告営業にしないことが大切です。

ダイレクトマーケティングの世界でいえば、一度離脱したお客様を再び復活させるには、新規のお客様を獲得するよりも約2倍のお金と労力が必要となるからです。

焼畑式営業をしてしまうと、一度離脱してしまったお客様を再び戻す努力よりも、新規のお客様を開拓するほうが、実は労力が少なくて済むという逆説的な結果になるということを覚えておいてください。

高度成長期で人口が増加する市場拡大の時代においては、このレスポンス広告を多用した営業の見込み客開拓をしても、焼畑式営業になりづらかったのです。

しかし、とくに人口が減少する地方都市や特定の狭いエリアにおいて少子高齢化の状況の中では、お客様との生涯価値を生み出すようなサービスメニューや付き合い方を計画的に構築しておくことが、レスポンス広告を導入する際の前提条件となります。

目先の売上げ増に目がくらみ、レスポンス広告を安直に取り入れて、将来の優良顧客の芽を自ら刈り取ってしまうことのないように、顧客関係維持に労力を費やして売上げを上げられる仕組み作りにしっかりと取り組んで下さい。

橋本美穂
河辺よしろう
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