社内で経費として使われるものはよく見えるために、どこの会社でも細かく節約されています。
この経費節減はすでに改善の余地がかなり少なくなっているのが実情でしょう。
これに対して、内部経費の「3倍近く」を占める営業経費は「会社の外」で消耗されるので、例えば大きな損失を出していても気付きません。
これを考えて、内部経費まで含めた、販売係が責任を持つべき「実質上の営業原価」を計算すると「一時間あたり5,000円から15,000円」にもなっています。
仮に、地域戦略の研究不足から、販売係の移動時間が業界の平均より一日につき「一時間」多くなっているとすると、毎日ひとりの販売係が1万円近い損失を出し続けていることになってしまいます。
1年間は仕事日を「250日」とすると、1人の販売係が無駄にする損失は、一年間で「250万円」です。
販売係が10人いるとすれば、一年間に発生する損失は「2500万円」。
販売係が20人いれば「5000万円」にもなります。
この状態が7年とか10年も続けば、恐ろしいばかりの金額になりますので、怖くて計算できません。
あなたは自動販売機で缶コーヒーを1000円札で買おうとした時、もし風にあおられてお札が飛んでいったら慌てて拾いに行くでしょう。
中には目の色を変えて、死に物狂いになって拾いに行く人もいるのではないでしょうか。
ところが、販売係の移動時間が多くなったことが原因で出る損失には音がしないばかりか、いくら決算書を分析したところで事実はつかめません。
一年間に何千万という多額の損失が出ていてもこれに気が付かず、暢気に構えている社長が多いのに驚くばかりです。
これを昔の人は「知らぬが仏」と呼んでいますが。
このまま放置しておくと、見えざる損失のために会社の体力が弱っていき、やがて「会社が仏」になってしまうのは明らか。
会社の仏がたくさんでているのは、実に残念です。
出典
河辺 よしろう著『小さな会社☆社長のルール』フォレスト出版