ランチェスター戦略は使えない?欠点はあるのか?

ランチェスター戦略は使えない?欠点はあるのか?(1)

原理原則としてのランチェスター戦略の本当の活用方法とは?

近代ビジネスにおいて、競争力を高めるためには様々な戦略を検討する必要があります。

その中でもランチェスター戦略は、競争相手との戦いをモデル化し、そのモデルを用いて企業が競争相手との関係性を分析し、自社の市場シェアを高めるための戦略を立てる手法です。

しかし、一部のケースではランチェスター戦略が使えない場合もあると指摘されることがあります。

今回は、会社の市場占有率の目標設定からランチェスター戦略の欠点や使えないケースについて考察します。

例えば日本一給料の高い会社として有名な京都の「キーエンス」という会社。
この会社はシェアというものを目標にはしないと明言しています。

「シェアは結果論なので意味がない」と考えているためです。

「キーエンス解剖」(日経BP社刊より抜粋)に書かれているキーエンスの市場シェアに対する考え方について触れてみよう。

「市場規模が1000億円で、3割のシェアを目指します。年間300億円の売上高になります」という説明はご法度。

キーエンスでは「この商品のターゲットとなる顧客を30社ヒアリングしたところ、20%が購入しそうだった。全国では2000社程度がターゲットとなるので、利益はこれくらいになる」と積み上げ方式で説明しなければならない。
潜在的な市場を開拓すれば市場規模自体が大きくなるのに、今の市場規模で顧客を奪い合う戦略を立てても意味がないという発想だ。

これはまさに実際に営業戦略を立てる上でとても重要なことで、ここで言う市場占有率目標の設定には具体性がないということが指摘されています。

ランチェスター市場占有率1位の条件

商品、地域、業界/客層の分野において以下の条件を満たすと、一人当たりの純利益が業界平均の3~6倍になる。

  1. No.1であること
  2. 市場占有率 26%以上
  3. 2位との間に10:6以上の差(売上差でライバルの1.7倍差以上)

市場占有率のシェア・レベル
26.3% 1位最低の条件
41.7% 安定的な1位の条件
73.8% 絶対的1位の条件


キーエンスの優れている考え方は、「シェア26%」といっても、競合相手が既知であることを前提として、現代のビジネス環境では新興企業や未知の競合相手が急速に台頭することもあり「商品」、「地域」、「業界/客層」といいった分野でどのようにシェアを把握すればよいのかというところから、もっと具体的な積み上げ方式で潜在ニーズを具現化した営業に取り組む方が合理的な目標設定であることは間違いありません。

また、新興企業や未知の競合相手との競争においては、他の戦略や柔軟性を持ったアプローチが求められることもあります。

もう一つ、ランチェスター戦略の欠点を見ていきましょう。

ランチェスター戦略は、目標設定で有名な市場のシェアの分類で活用する場合があります。競合他社とのシェアを基に戦略を立てるためにすそ野の広い業種には当てはまらないという場合が多々あります。

例えば地元の飲食店、税理士さんなどの士業などです。
簡単に言い換えれば市場占有率で26%以上のシェアを取ることが現実的ではない業種です。

ランチェスター戦略は競合相手が既知であることを前提としています。

しかし、現代のビジネス環境では新興企業や未知の競合相手が急速に台頭することもあり適用が難しくなる可能性があります。新興企業や未知の競合相手との競争においては、他の戦略や柔軟性を持ったアプローチが求められることもあります。

ここでキーワードになるのが「ランチェスター市場占有率の消費の爆発点」ということです。これはセブンイレブンの創業者である鈴木敏文氏の言葉です。

セブンイレブンは常に一つの重要な目標に、ランチェスター地域戦略における市場占有率26%以上というものを追い続けてきました。

これは特定にエリア内においてセブンイレブンの店舗数が全体の26%以上になると、店舗当たりの日配が大幅に増加することを意味し実際に一人当たりの年間経常利益額をコンビニ各社で比較してみると、セブンイレブンは競合他社に比べて2倍以上を稼ぎ出しています。

逆に言えば、商品、地域、業界/客層においてマーケットの範囲を特定しやすいもの、そして裾野の狭い業界においては目標が取り易いということになります。

大企業で言えば、トヨタ自動車や花王は常に商品分野、地域分野で言えば飲食店分野で函館のラッキーピエロや名古屋の手羽先やまちゃん。他にホームセンターなどでは鹿児島のスーパーセンターAZや宮崎のハンズマンなどが市場占有率を高めて大きな利益を出していますね。

欠点や使えないケースがあっても、ランチェスター戦略は依然としてビジネスにおいて有効な戦略であると言えます。

なぜなら、ランチェスター戦略は競争相手との力関係を明確にし、リソースの効果的な配分や市場戦略の最適化を可能にするからです。

また、市場の情報が充実している場合には、ランチェスター戦略を用いて効果的な戦略を立てることができます。ランチェスター戦略を基にした市場シェアの分析は、ビジネスの基礎的な分析手法の一つであり、多くの企業が採用しています。

さらに、ランチェスター戦略は市場占有率と競争相手との関係性を考慮することによって、競合他社との戦略的な優位性を確立することができます。このため、ランチェスター戦略は新規参入企業や海外進出企業にとっても有効な戦略となります。

以上のことから、ランチェスター戦略は使えないケースがあるものの、ビジネスにおいて非常に有効な戦略であると結論付けられます。ランチェスター戦略を用いて競争相手との力関係を分析し、効果的な戦略を立てることで、ビジネスの競争力を高めることができます。

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