太陽光発電大国を目指す岸田政権で、家庭の「再エネ賦課金」負担はうなぎ登り
日本のエネルギー自給率は1950年代に58%の水準を達成、その大部分を水力が占めていたことをご存知ですか?
1968年公開の日本映画三船敏郎と石原裕次郎によって製作された『黒部の太陽』(くろべのたいよう)は、木本正次による1964年の小説を原作とするもので、当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設のトンネル工事での苦闘を描いている作品です。
この当時は、高度成長期の日本のエネルギー需要の高騰による、国を挙げての電力発電の確保が急務になっていた時代を背景に作られた映画でした。
しかし、その後2000年代になって環境問題への注目の高まりもあって、世界各国の再エネ技術開発や導入拡大の取り組みが加速していき、日本も相対的により高度な対応が求められるようになりました。
2009年11月1日に、太陽光発電の余剰電力買取制度は、「低炭素社会の実現」に向けて、「エネルギー供給構造高度化法」にもとづき制定されました。
しかし、この「太陽光発電の余剰電力買取制度」から、日本のデタラメなエネルギー政策がはじめられたのかもしれません。
2012年から始まったFIT法は、その対策の一つであり、その前身といえる制度に「太陽光発電の余剰電力買取制度」がありました。
FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度で、この買取に要する費用負担は、電気を利用する国民全員から、2014年8月より再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)という形で収集されています。
そして、2016年(平成28年)4月1日より電気の小売業への参入が、全面自由化されました。
日本では家庭や店舗向けの電気は、各地域の東京電力や関西電力などの電力会社だけが販売しており、自由に会社を選ぶことができませんでしたが、家庭や店舗も含む全ての消費者が、好きな電力会社や料金プランを自由に選べるようになりました。
その当時誕生した「新電力会社」は電力発電をしていない会社も多く、JEPX(電力取引所)などで電力を調達して販売している会社が沢山あります。
日本では原子力発電所の停止、原油の高騰、天然ガスの価格上昇によって余剰電力が激減している現在の状況では「新電力会社」は仕入価格の上昇によって、完全に「逆ザヤ」状態が続き撤退や倒産が相次いでいるという状況になっています。
そもそも「太陽光発電の余剰電力買取制度」とは、「国民の全員参加」により太陽光発電の普及拡大を目指すものという振れこみではじまり、太陽光発電システムによって作られた電力のうち、使われずに余った余剰電力を、法令で定める条件により電力会社が買取する(水力、バイオマス、地熱は対象外)というもの。
この電力会社が、余剰電力の買取に要した費用を国民全体に圧しつけて、2010年4月1日以降は「太陽光発電促進付加金」として、電気を使用する全ての需要家が負担することにされました!
そして、この「太陽光発電促進付加金」は、2012年7月より「FIT制度」に移行したことで、電気料金に勝手に上乗せされる「再エネ賦課金」というものに統一され、毎月の私たちの電気料金に加算されています。
再エネ賦課金の単価は、年度ごとに国が全国一律で決定しており、全国全ての電力会社で同一の料金体系となっていますが、簡単に言ってしまえば「再エネ賦課金は電気料金に上乗せされる形」で、電力会社より私たち一般消費者に請求されているだけのことです。
しかし、さすが経団連にいいなりの自民党さん。
法人税は上げないで所得税をなんとかして上げようとしているのと同じで、法人にはちゃんと逃げ道を作ってくれています。
それが「減免制度」といわれるものです。
一応、政府は電力多消費事業者の国際競争力の維持・強化の観点からと説明をしていますが、一定の基準を満たす事業所については経済産業大臣の認定を受けることにより、賦課金の減免措置の適用を受けることができるというものです。
2016年9月28日公布の減免制度の政省令によって、製造業等8割、その他は4割の減免となっています。
法人は減免して、一般個人にすべて負担させる形ですね。
ちなみに減免認定を受けるための要件とは?
- 製造業においては電気の使用に係る原単位(売上高千円当たりの電気の使用量)が平均の8倍を
超える事業を行う者、非製造業においては電気の使用に係る原単位が平均の14倍を超える
事業を行う者(製造業、非製造業ともに5.6kWh/千円を超える必要あり)。 - 申請事業所の申請事業における電気使用量が年間100万kWhを超えること。
- 申請事業における電気使用量が申請事業所の電気使用量の過半を占めていること。
- 原単位の改善のための取組を行う者。
となっています。
これを見てもお分かりの通り、根本的な将来ビジョンがない中で、一般家庭の電力負担を増やしているだけという実態が浮かび上がってきます。
そして、その影響で一般消費者への「再エネ賦課金」負担の上昇が最近、ヤバいことになっているのです!
無作為に太陽光発電に舵を切る政府の対応はどうなっていくのだろう?
電力自由化に伴って参入した新電力各社が、電力の取引価格の高騰で苦境に陥り、帝国データバンクなどの情報によると、倒産は前年度(20年度)の2件から急増した。年度を通じて倒産が2桁に達しています。
電力小売事業からの撤退も増えていて21年4月に確認できた新電力約700社のうち、約4%に当たる31社が過去1年間で倒産や廃業、事業撤退などをしていたようです。
新電力の多くの会社は発電所を持たず、調達の多くを卸市場に依存しています。
ある大手の新電力会社の役員に私が聞いた話によると、2019年の12月末からその状況ははじまり、2021年の冬の市場価格高騰で電力調達コストがさらに大きく上昇し、不足インバランスの支払いが発生する事業者が増えた模様。
さらに追い打ちをかけているのがウクライナ戦争による原油の高騰と、その代替え燃料としてのLNG(液化天然ガス)などの高騰によって卸電力価格はさらに高騰。
新電力各社の経営を直撃しています。
最近ではホープエナジー(福岡県福岡市)が破産手続きを開始したり、エルピオ(千葉県市川市)が4月末でサービスを終了すると報道されています。
ビジネスモデル的にいえば、新電力会社はこれまで安値で差別化を図ってきていたので仕入れ価格の高騰を価格転嫁できないでいる状況です。
おそらく、市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が、今後も発生する可能性が高いと市場では見られています。
新電力は、2016年に始まった一般家庭向け電力小売りの自由化で参入が増加したのですが、大手電力との競争を促し、料金引き下げやサービス向上につなげる狙いだったのが、地政学上のリスクで見事に日本の政府の期待を裏切った形になりました。
日本という国の電力の安定供給体制の再構築が急務であることは明白です。
それは、結論として原子力発電所の再稼働を後押しするとともに、火力発電への投資を促す仕組み作りをする以外に日本のエネルギー不足を解決する方法は、今のところないからです。
エネルギー政策は「国家安保」の重要な要素なのです。
今後、日本の製造業は世界一高いエネルギーコストを負担させられて、中途半端に高い人件費と働く人の価値観の変化によって、高度な経営の舵取りが必要になってくることは明白ですね。
エネルギーコストが上昇すれば、製造業の問題だけでは当然済まない問題に発展します。
日本のエネルギー政策について、ここでしっかりと学んでみませんか?