営業の数値シミュレーションができる会社とできない会社
緊急事態宣言が一段落して、これから冬の時期のコロナ禍の行方が気になるところですが、やはりコロナ禍で業績が痛んだ会社さんも少なくないようです。
大手の話ではありますが、JTBはコロナ禍で旅行需要低迷が長期化する中、9月に本社ビル2棟を約300億円で外資系投資ファンドに売却、手元資金の確保を急いだようですね。
昨年未には、エイベックスが都内青山の1等地にある本社ビルを、カナダ拠点の不動産ファンドに約720億円で売却しています。
21年6月末時点の国内不動産への投資額に占める都心5区の比率は、前年比9ポイント増の38%で、全体の取引額が減る中、都心への資金集中が進んでいることが分かります。
今、東京の都心5区での不動産は、ちょっとしたバブルといってもよい状態になってきています。
先日、クライアントの不動産会社の社長さんにお伺いした話ですが、このコロナ禍である上場している不動産FCチェーンの創業社長さんは東京都内の不動産物件に100億円以上を投じて不動産を購入しているとのこと。
ホテルで有名なアパホテルの創業者の方も、これまでに積極投資でコロナ禍での不動産取得を大幅に拡大されているとのこと。
こういう方たちを見て、
「さすが大きい会社に育て上げる人は、度胸が据わっている!」
といいたくなるものですが、確かに度胸が据わっていることもあるでしょうが、こういった社長さんはしっかりとした事業のシミュレーションをした上で、積極投資に動いているのが実情だと思います。
事業シミュレーションというと難しく聞こえますが、エクセルを使って誰でもできるということは、あまり中小企業では理解されていません。
例えば、ワークマンなども新入社員は2年間直営店の店長として最初に配属されますが、売上責任は一切追及されず入社から5年間はエクセルによる売上、仕入れ分析、店舗運営全般に関わるシミュレーションをガッツリと叩き込まれます。
ワークマンには70名程のスーパーバイザーがいるそうですが、その中でも12名程の人がエクセルを使った事業シミュレーションの達人として、会社の事業計画の策定に大きな存在感を示しているそうです。
社内に事業シミュレーションをできる人を増やすということは、ある意味「全員経営」ということにも繋がります。
では「シミュレーションをしない人」と「シミュレーションをする人」の違いとはどんなところにあるのでしょうか?
1.シミュレーションをしない人のパターン ✕
発言
「このままだといつか赤字になる!」
- 売上を○○円上げましょう
- 利益を○○円増やしましょう
- 経費を○○円削減しましょう
結論
「これを実現すれば利益がかなり出ます!」
問題点
具体的にどうやって「売り上げを上げるか」、「どの経費を削減するのか」ということがいい加減で
現場の取組に落とし込めない。
2.シミュレーションをする人 〇
発言
「このままだと6ヶ月後に赤字になる!」
- 新商品開発で売上10%アップ
- 正社員の自然減でパートを増やして、人件費構造を10%削減
- これを3ヶ月で実現できれば、今期は3,000万円の黒字の見通し
良い点
具体的にどの商品や投資分野に力を入れていくのかが明解。机上の希望数値ではなく明確な現場目標が取り組むことと一緒に分かる
つまり簡単に言ってしまえば、シミュレーションをする人の思考は3段階で簡単に説明ができることです。
- 営業戦略案
- 予想効果
- 利益インパクト
シミュレーションをできる人の事例1
- 営業戦略(案) 「営業社員の増員」
- 予想効果新 「新規顧客10%↑」
- 利益インパクト 「300万円のプラス」
シミュレーションをできる人の事例2
- 営業戦略(案) 「既存客のフォローアップにしっかり取り組む!」
- 予想効果 「リピート10%↑、紹介5%↑」
- 利益インパクト 「800万円のプラス」
シミュレーションをできる人の事例3
- 営業戦略(案) 「インターネット広告を打とう!」
- 予想効果 「新規顧客20%↑、広告費5%↑」
- 利益インパクト 「600万円のプラス」
シミュレーションをできる人の事例4
- 営業戦略(案) 「営業所の統廃合でコストダウン!」
- 予想効果 「賃貸料を年1,200万円↓」
- 利益インパクト 「▲1,200万円」
こういった事業の簡単なシミュレーションを社内でどれだけしているかということが、実はとても大切なのです。
「いくら売り上げがたりない」「経費をどれくらい削る」という話に終始しているところは、この事業シミュレーションの会話に慣れていないので、数字に対する共通認識が持てないことに問題が生じます。
事業シミュレーションはエクセルを使えば簡単にできます。
ただし、自社にあった売上分析、投資分析、マネジメント分析などをしっかりとしようと考えると、前述のワークマンのように5年も掛かってしまうことも一方であります。
あなたの会社では日々、数字に対してどんな会話をしていますか?
事業シミュレーションを使った営業会議は行われていますか?