国内ではランチェスター市場占有率で「強者の戦略」を取るトヨタ自動車

2020年11月27日の、Automotive media Responseの発表によると、昨年10月におけるトヨタの国内販売実績が13か月ぶりのプラスとなり、登録車シェアは55.8%になっています。

国内販売(含軽)も同37.4%増の14万4348台で13か月ぶりのプラス。
軽自動車を除いては同37.6%増の14万1405台。
軽自動車を除く市場のシェアは55.8%で、前年同月と比べて2.5ポイントアップしました。

日本の自動車業界では、コロナ禍でもトヨタが圧倒的な強さを見せています。
2020年4月~2021年3月の国内自動車販売台数をみると、上位5位までの車種をトヨタがすべて独占しており、他メーカーを大きく引き離しています。
新車販売のメーカー別シェアをみても、国産車の中では購入者の7割はトヨタ車を選んでいるという状況です。

自動車というカテゴリーで、この市場占有率は驚異的な数字です!

ランチェスターの市場占有率でいえば大きく分けて3段階に分かれます。

  1. 26.1% 1位最低の水準
  2. 41.7% 安定的1位の条件
  3. 73.8% 圧倒的1位の強者

ソフトバンクなどが成長してきた背景にも、市場参入における市場占有率の法則を活かした戦略が有名です。

トヨタは、自動車販売というカテゴリーで驚異の国内市場50%越えを達成しました。
実は、これは偶然ではありません。

トヨタは、何十年も前から経営目標の「国内乗用車市場の40%超」というものを目指した戦略を取ってきたのです。

アメリカなどで新工場を作る時も、常に「市場の40%」という目標を掲げてきたのがトヨタです。

しかし、トヨタがこの目標にどうしても手が届かないのが「中国市場」です。

「中国自動車工業協会は1月13日、2020年の中国の新車販売台数の結果を発表した。
総販売台数は2531万1000台。前年比は1.9%減と、3年連続で前年実績を下回った。

日系メーカーでは、首位のトヨタが2020年、中国で過去最高の179万7500台を販売した。
前年比は10.9%増と2桁増を達成している。

日系2位のホンダも、過去最高の162万6972台を販売した。
前年比は4.7%増と、2年連続で前年実績を上回った。
ホンダは中国において、東風汽車との合弁の東風ホンダ、広州汽車との合弁の広汽ホンダの2社を展開している。
2020年実績は、東風ホンダが新記録となる82万0393台を販売し、前年比は4%増。
広汽ホンダも過去最高の80万6579台を売り上げ、前年比は5.4%増と前年実績を上回った。」
(参照:Automotive media response.の2021年1月17日)

上記のように、マスメディアなどの記事だけ見ていると、トヨタ車が中国でとても売れている印象をいだいてしまいますが、中国の市場占有率という観点で見ると、いかに中国で日本の自動車メーカーが稼ぐのが困難であるかがよくわかります。

上記の記事より、2020年のトヨタの中国市場でのシェアを計算してみると、よく理解できます。

中国での市場占有率

トヨタ 7.1%
ホンダ 6.4%
東風ホンダ 3.2%
東風日産(乗用車) 5.8%

メディアの記事を表面的に見ていると、中国での日本車の販売が劇的に伸びているように見えますが、実態はこの程度です。

ちなみに、インドネシア自動車工業会(ガイキンド)の発表によると、2020年通年の国内自動車販売台数(小売ベース)は、前年比44・7%減の57万8327台。
インドネシアでの日系ブランドのシェアは96・3%で、前年から0・2ポイント増加しました。

中国の国策とインドネシアの違いが、歴然と分かります。

米国のテスラなども、EV分野での中国企業保護の目的から自動車購入時に購入者が得られる補助金から外れるように建付けがされていて、最近はテスラ社で事故を起こした女性が
「ブレーキが利かなかった!」
と裁判に訴えて、モーターショーのテスラのブースに乗り込んで、大騒ぎになったりしていたのが知られていますね。

基本的に、日本の企業がどんなに中国の市場に期待したところで、甘い蜜を吸うことはありえないということを、日本のマスメディアは意図的に報道していません。

統制経済の中国において、日本の企業が市場占有率を高めていくことは、事実上不可能だと私は考えています。

それよりも、今後は中国のEV、ハイブリッドを中心とした自動車メーカーが日本にどんどん入り込んできて、トヨタの国内市場にも影響を与えるようになるでしょう。

日本の政府は、ことさらEVの販売にこだわりますが、中国は2035年の新車販売にしても、日本のように100%EVの新車にするなどとは言っていません。

中国が目指しているのは50%をハイブリッド車、残りの50%をFCV(燃料電池自動車)やEVなどで賄うと計画を立てているのです。

原発を停止したまま、トヨタは2020年半ばには新車販売をすべてEVにするというような狂った政策を掲げるこの国で、これから先どんな戦略をとっていくのでしょうか?

そして、いつまでも市場占有率が伸び悩む中国市場を餌にされながら、トヨタは日本の国内乗用車市場の現在の占有率を、どのように守っていくのでしょうか?

負けるなトヨタ自動車!

参照:JNEWS.COM

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