コロナ倒産に見えて、実はコロナ前から倒産に向かっていた会社たち

既存の原因からコロナが引き金になって廃業、倒産する企業の共通点

中国の武漢からコロナが発生し、全世界をパンデミックに巻き込んだコロナ禍になって、日本では倒産する会社は政府の財政出動などによって過去にないくらい低水準になっている一方、社長年齢が60代、70代の会社の廃業する会社がとても増加しています。

たまにニュースで入ってくる大手の「倒産」情報も、一見するとコロナ禍が影響して倒産したと思われることが多いと思いますが、実は意外と多いのが「既存のしわ寄せ」という傾向です。

既存のしわ寄せとは、過去に蓄積していた「会社の問題」の解決を先送りして、なにかを切っ掛けに倒産、廃業することを指します。

倒産劇で有名な大塚家具やワタベウエディングが、その典型ともいえる会社です。

大塚家具は泥沼の親子喧嘩が世間では有名になってしまい、創業者である父親を追い出す形で娘が会社を引き継ぎましたが、結局手元にあった内部留保の270億円は数年で枯渇して資金難に陥り、最終的にヤマダ電機に買収され、1年程大塚久美子氏が社長を継続したものの、経営改善することができず解任になりました。

大塚家具でいえば「営業利益の赤字」からはじまり、「ビジネスモデルの再構築、もしくは追及」ができない状態のまま事業継承後も経営を続けてきたことが致命的になり、この時期に完全なるヤマダ電機の子会社となったわけです。

そして、皮肉なことにも、大塚久美子氏がヤマダ電機を解任されて1年足らずで、事業は黒字化になってきました。

ビジネスのシビアさを、実感する出来事ですね。

もう一社、ワタベウエディングもコロナの影響で倒産したと見られていますが、コロナ禍が引き金になったかもしれませんが、先代の渡部隆夫氏の日経トップリーダー(2021.4)のインタビューによれば、13年前に長男の渡部秀敏氏に事業承継したときから崩壊の道を進んでいたと答えています。

ワタベウエディングは海外挙式の草分け的な存在で、ハワイを中心としたリゾート結婚式を展開してきましたが、渡航制限の影響を受けて、売上の半分を占めていた海外挙式を行うことが不可能となり、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)による債務の私的整理を行うことを、2021年3月に発表しました。

背景には新型コロナの影響により、派手な結婚式を行う習慣は衰退してきているという現実はありますが、社長の父親である先代の渡部隆夫氏にとっての倒産原因は、コロナ禍にあるわけではないという考えをもっていました。


「私が社長をしていた頃は、売上高が550億円ありました。
長男の渡辺秀敏に変わってから100億円下がり、その後はほぼ横ばいの状態です。
合理化と称して人員削減などで経費を削って、わずかな利益を出すだけ。経費を削れば、次の戦略構築に支障をきたすのです。
完全に悪循環に入っていた。コロナがやって来なくても、いつか潰れると思っていました。

ただ、やりようはいくらでもあったはずです。

そもそも、いまだに海外ウェディングを事業の柱にしているのが理解できません。
私がハワイに支店を出してから50年近くが立つのです。

「会社の寿命は30年」だと言うのに、どうしてそんな昔の事業が今も中心なんですか。
海外挙式が事業から消えてもいいくらいなのに、新しい戦略構築をしてこなかった。」
渡部隆夫氏


つまり、大塚家具と同じように「ビジネスモデルの再構築、もしくは追及」ができない状態のまま、事業継承後も何十年も変化を生み出さない経営を続けてきたことという共通点があるのです。
大塚家具は、先代の社長が「市場の変化に対応した新しいビジネスモデル」を娘に託したはずだったのでしょうが、その能力はなかったわけです。

大塚家具、ワタベウエディングの事業承継の失敗劇は、ドイツの軍人、ハンス・フォン・ゼークト(1866‐1936)のいうところの「やる気のある無能」という司令官が事業承継してしまっていた典型例かもしれませんね。

最後に、日本での結婚式市場のコロナ禍における影響を見ておきましょう。
日本では、年間およそ60万組のカップルが結婚します。

ワタベウエディングの先代が「ハワイ挙式」という新サービスを開発した1970年代には、年間100万組の婚姻数がありましたが、すでに日本人の結婚の価値観は大きく変化してきました。

とくに、2020年以降は新型コロナの影響によって、さらに婚姻数は落ち込んでいます。

厚生労働省が発表する人口動態統計(速報値)によると、2020年11月末で集計した過去1年間の婚姻数は、前年比で10%近く減少し、さらに2021年は、出生数も前年比マイナス7.5%に落ち込むことも予測されているそうです。

婚姻数の推移(国内)

  • 1970年……102.9万組
  • 1980年…… 77.4万組
  • 1990年…… 72.2万組
  • 2000年…… 79.8万組
  • 2010年…… 70.0万組
  • 2015年…… 63.5万組
  • 2018年…… 58.6万組
  • 2019年…… 59.9万組
  • 2020年…… 53.8万組
    ※出所:人口動態統計

当然、コロナ禍におけるブライダル市場の落ち込みは統計値以上に深刻で、結婚カップルの中でも、結婚式を中止したり、招待客を最小限に抑えて開催するケースが相次いでいることは、皆さんもよくご存じだと思います。

国内ブライダル業界で売上高1位のテイクアンドギヴ・ニーズは、2020年4月~12月の婚礼件数が前年同期で7割減となり、婚礼1件あたりの単価と平均参加人数でも減少傾向が顕著です。

最終損益は131億円の赤字で、農林中央金庫などを引受先として30億円の第三者割当増資を行うことで、当面の資金繰りを凌いでいる状態です。

テイクアンドギヴ・ニーズ

テイクアンドギヴ・ニーズの業績推移

婚礼件数

  • 2019年4~12月……9,214件
  • 2020年4~12月……2,982件

婚礼平均単価

  • 2019年4~12月……393.5万円
  • 2020年4~12月……353.2万円

平均人数

  • 2019年4~12月……69.5人
  • 2020年4~12月……49.1人
    ※出所:同社決算資料

婚礼業界と同じように、一時期は国内のサービス業で成長を期待されていた葬儀業界も、新型コロナの影響は甚大です。

葬儀の件数に大きな変化はないものの、規模を縮小した葬儀が主流となっており、葬儀1件あたりの単価が減少。
関西を中心に全国100ヶ所の式場で年間14,000件の葬儀を施行する燦ホールディングスでは、葬儀単価が7~15%下落しました。
これは、感染対策で参列者を減らすことに伴い、供養品や返礼品の販売需要も減少していることが関係しています。
さらに、社葬を含めた500万円以上の大規模葬は、前年比で施行件数が半数以下に減少して、施行収入でも6割減となっているそうです。

燦ホールディングス

結婚式や葬式が今後も無くなることはないでしょうが、派手なセレモニーや無駄な習慣は省いた、簡素化された儀式へと消費者のマインドはどんどん変化していくでしょう。

統計値では、日本の結婚式は平均360万円、葬式は200万円となっていますが、その中でも飲食接待費や返礼品の費用が多く含まれていることが業界全体に大きな影響を与えています。

海外でも、コロナを転機として結婚を簡素化する動きは高まっており、従来の無駄を省いて新スタイルの結婚式を行うカップルが増えているようです。

また、男女の出会いについても、学校や職場でのチャンスが激減していることから、オンライン上のマッチングサービスを利用する若者が急増しており、恋愛スタイルにも変化が生じているそうなので、そうした時代の転換期に新ビジネスがどんどん登場する機会が増えてきそうですね。

参照
JNEWS.COM

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