中小企業にも参入できる、SNSのナノインフルエンサーの代理店エージェントビジネスについて話したいと思います。
これは、今までのテレビ、ラジオ、新聞折り込みといった従来型の広告宣伝を大きく変える潮流ですので、中小企業も仕組みをよく理解しておかないとPRがとても難しくなると考えられます。
実際、衣料品チェーン大手の「しまむら」も、2021年4月5日、21年2月期連結決算を発表し、4期ぶりの増収増益を果たし「巣ごもり需要」の取り込みや広告戦略の見直しが奏功したと発表されています。
既存の広告宣伝費を削っても効果が大きかったようで、売上高は前期比4.0%増の5426億円、最終利益が同99.3%増の261億円。3期連続で減収減益でしたが、好転しました。
とくに、広告戦略の見直しが効果的だったようで、第2四半期からデジタル広告を、第3四半期からは動画広告の出稿を増やし、客足増加につなげるために、年齢や性別、商品セグメントごと広告を配信する手法を、新たに取り入れたそうです。
今、会社や製品のPRの現場で構造が大きな変化を起こしていて、『零細・中小企業の実践的YouTube活用方法』でご説明した通り、有名YouTuberも登録者数、再生回数だけでは単価下落によって今後、収益性の改善が急務になってきています。
これは、恐らくYouTube側としての目的としては、全体の視聴者数の確保は目標値を上回ったことで、今後は「コンテンツの質の向上」をテーマに金になるビジネスモデルという視点からの戦略転換をしてきたからです。
最近のYouTubeは、コンテンツの内容で見る限り、内容が面白いというよりも習慣化してYouTubeを見ている人が多くなってきた気がします。
コンテンツとして充実しているものは個人的な意見として言えば、歴史、政治、芸術などの分野で、映像に音声での内容のしっかりしたものが多いような気がします。
そんな中で注目されているのが、YouTubeの投げ銭といわれるスーパーチャット機能です。
日本のバーチャルYouTuber(VTuber)や、コロナ禍で音楽イベントの開催を余儀なくされたアーティストなどが、この仕組みを利用してファンから多額のスパチャを集めていますね。
YouTubeのスパチャで約1億6000万円稼いだ人
YouTubeのさまざまなデータを収集・公開している「Playboard」が発表した年間ランキングによると、2020年に最もスパチャを受けたのは桐生ココさんで、総額は約1億6000万円だったそうです。
桐生さんを含めた上位3位は1億円以上のスパチャを受けており、いずれも日本勢が独占というのが
凄いですね。
トップ10にもVTuberを中心に9人がランクインとなるなど、日本勢が席巻しているのが今の状況です。
ニッチ化するインフルエンサー商圏でナノインフルエンサーを起用するエージェントビジネス
海外では、非有名人のインフルエンサーをキャンペーンに起用したいと考える企業が増えていて、フォロワー数が5000~1万人規模のナノインフルエンサーの価値が高まっています。
ナノインフルエンサーとは、フォロワー数が数千人~1万人以下の事です。
メガインフルエンサーよりもフォロワーの数こそは100分の1と少ないですが、多くのナノインフルエンサーを複数多用すれば、メガインフルエンサーよりも費用対効果は高くなる可能性も秘めていることから注目されています。
高級チョコレートブランドの「GODIVA(ゴディバ)」は、英国内のブランド認知度を高めるため、Instagramでフォロアー数が1万人前後のインフルエンサーを対象に、一人あたり1kg分のチョコレートを500人にプレゼントして、大切な家族や友人と共有してもらうキャンペーンを実施しました。
インフルエンサーの募集は「ZINE」というインフルエンサープラットフォーム上で行われましたが、最初に、ブランドのイメージにあうインフルエンサー2000人が選定されてキャンペーンの告知がされた後、実際に応募があった中から500人が選定されたようです。
このキャンペーンでは、GODIVAのチョコレートをInstagram上で紹介する義務は課せられなかったものの、大半のインフルエンサーは工夫を凝らした写真を投稿したことで、最終的には500万人以上の消費者にGODIVAブランドが認知されたそうです。
また、スポーツ用品業界の中でも、世界的に有名なアスリートではなく、フォロワーが数千人のマイナーアスリートが提携先として注目されてきています。
彼らのフォロワーは、チーム仲間、友人、職場の同僚、地元のファンなど、リアルな繋がりを持つ人間関係が多く、マーケティング対象としての価値が高いのです。
そのため、用具、ウェア、消耗品などの無償提供をすることの費用対効果は高く、メジャーな大会で活躍して、知名度が上昇した時の投資にもなるということがその要因のようですね。
YouTubeは映像配信サイトから「人脈サイト」へと変貌してきている
ナノインフルエンサーは、フォロワーの数は少なくても、エンゲージメント率が高いのが特徴で、これはマーケティングで大きな失敗(広告費の損失)をしたくない企業側のニーズとマッチしているという潮流が生まれていますね。
副業として注目されるナノインフルエンサー
ナノインフルエンサーの起用については、自社の製品を無償提供してフォロワーに紹介してもらう方法と、インフルエンサーと月単位の契約をして有償で製品のプロモーションを依頼する方法の、2種類があります。
有償の場合でも、フォロワー数が1万人未満のインフルエンサーは月額報酬が1000ドル(約11万円)未満ですが、サラリーマンの副業としては美味しいのではないでしょか?
ナノインフルエンサー起用のマーケティングでは、YouTubeよりもInstagram、さらに最近では、TikTokが好まれる傾向がありますが、これは企業が顧客ターゲットとしたい10~20代の女性層との相性が良いためだといわれています。
中高年層は、もともとLINEやTikTokは情報管理の問題があることなどから敬遠されていましたが、客層によっては利用価値があるということですね。
ナノインフルエンサーの収益構造
人気の高いナノインフルエンサーになると、複数の企業と提携しており、「月額報酬500ドル×5社」というような収益のポートフォリオを作ることが可能で、さらにSNS上に投稿した写真を、企業が他の広告媒体で二次利用したい場合のライセンス料などが加算されるケースも想定されるので副業にはとても向いていますね。
次に、中小企業にも参入できるSNSのナノインフルエンサーの代理店エージェントビジネスについて、話したいと思います。
最近は広告のコンプライアンスが重視されて、消費者に嘘をつかない正直品質のプロモーションを展開していく必要性が生じていることもあり、エンゲージメント率が高いナノインフルエンサーの需要が高まっています。
それに伴い、海外ではナノインフルエンサーのエージェント業が成長していますが、まだ現時点ではその大半は中小の事業者です。
Influencer marketing hubの調査によると、コロナ禍では、ステイホームによりオンラインで過ごす時間が増えたことから、インフルエンサーマーケティングの市場規模も、2016年の17億ドルから2021年には138億ドルに急成長しているそうです。
エージェント業者の数も、2015年には190社しかありませんでしたが、2019年には1120社、2020年は1360社と増えているのが実態です。
これは、日本でもこれから同様の業界構造になってくると思われますね。
アメリカのインフルエンサーエージェントの業者数
- 2015年……… 190社
- 2016年……… 335社
- 2017年……… 420社
- 2018年……… 740社
- 2019年………1120社
- 2020年………1360社
※出所:Influencer marketing hub
海外のインフルエンサーエージェント業者は、「代理店型」と「プラットフォーム型」の2種類があり、芸能事務所のようにタレントと専属契約を交わす方式とは異なっています。
代理店型のエージェントは、ブランド企業から製品キャンペーンの相談を受けた後、具体的なプロモーションの企画を立て、その内容に適したインフルエンサーをプラットフォームサイトに登録されているプロフィール情報から選定します。
オファーメールを送信して承諾を得られると、プロジェクト単位の契約を交わす流れになっていきます。
プラットフォームサイトの役割は、SNSで活動するインフルエンサーのプロフィール、フォロワーの数と属性、エンゲージメント率を分析、データベース化して、プロモーションの依頼や応募の受付、契約管理までができる機能を提供することにあるます。
インフルエンサーもAIが実力評価する時代
英国ロンドンを拠点に運営される「ZINE」は、インフルエンサープラットフォームの1つで、Instagram、YouTube、Twitter、Facebook、Pinterestなどの各アカウントで投稿されるコンテンツに対する、エンゲージメント率やフォロワー属性をAIが自動分析したデータベースを開発しています。
さらに、ブランドとの提携を希望するインフルエンサーが、詳細プロフィールを関係者向けに開示した「プレスキット」の登録ができる機能も用意されているそうです。
今までは、PRのためのアナログの「プレスリリース」が、SNSでの「プレスキット」に変わっていくのも時間の問題ですね!
プラットフォームが充実してきたことで、代理店型の業者は、特定のインフルエンサーと専属契約を結ばなくても、旅行、ファッション、子育て、料理、スポーツ、音楽など、多様な専門分野で、ニッチな影響力を持つ人材を必要な数だけ揃えることができるようになり、エージェント業をスモールビジネスとして立ち上げることも可能になってきているのは、中小企業にとっても凄いチャンスです!
代理店型エージェント業者は、ブランド企業から最低10,000ドル程度の予算からインフルエンサーマーケティングの依頼を受け、具体的なキャンペーンの企画から実施までを代行して、時給単価で100~200ドル×実労時間に相当する手数料をチャージしています。
ある日本のエージェントからのナノインフルエンサーの報酬例
- インスタグラマー基本料金
フォロワー数×1円~4円 - ストーリー投稿
フォロワー数×0.5円~3円 - インスタライブ配信
フォロワー数×1.5円~ - 二次利用費
1万円~100万円 - ハイライト掲載
1万円~100万円 - Instagram広告運用代行
広告費×15%
ナノインフルエンサーマーケティングの発注ルート
日本でも、ユーチューバーを中心に、インフルエンサーとして生計を立てようとする人達は増えていますが、フォロワーを増やすことに注力した挙げ句に、アンチのユーザー層が増えて様々なトラブルが生じるケースが増えています。
こうした事例が、海外では「インフルエンサーの恐竜化」と指摘され、恐竜は生態系の頂点に一度は立ったものの、図体が大きくなりすぎたことで、やがて衰退してしまうことと表現されています。
インフルエンサーを職業として長期で活動していくには、短期で大量のフォロワーを獲得することよりも、フォロワーとの信頼関係を大切にしていくことのほうが、価値は高くなるということです。
そこに気付いたのは、インフルエンサー本人よりも、広告の出稿先を決める企業側のほうであり、フォロワーの数よりも質が重視される大きな転換期を迎えています。