労働生産性の低い会社は離職率がアップする時代へ!

経営者の会に参加すると「うちの会社は社員を大切にしている!」とおっしゃる社長さんのなんて多いことか。
しかし、データで見る労働市場の実態は少し違うようですね。

ご存知ですか?

日本の労働人口は、サラリーマンの中でパートやアルバイトなど「非正規社員」として働く人達が約4割になること。

「非正規社員」も社員です。

柔軟な勤務シフトに対応できる非正規人材は、多くの業界にとって必要不可欠な労働力ですが、給与の面では正社員との間で約2倍の差があるんです!
さらに、男性と女性の間にも給与格差があり、男性(正社員)と女性(非正社員)では、3倍以上の年収差が生じているという日本の現実。

正社員と非正社員の平均年収(令和元年)

正社員 非正規社員
男性 561.4万円 225.6万円
女性 388.9万円 152.2万円
平均 503.6万円 174.6万円

※出所:民間給与実態統計調査(国税庁)

時間単価でみても、正社員と非正規社員は同じ職種でも1.5~2倍の差が生じていて、勤続年数が長くなるほど給与格差は大きくなります。

昇給に役立つ知識やスキルを学ぶための研修制度も、非正規社員には平等に与えられてないのが現実のようです。

しかし、雇用形態による給与格差は世界的にも是正されていく方向にあります。

日本でも、2020年4月には「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されて、大企業、そして2021年4月からは中小企業に対しても、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差が生じることが禁止されています。

禁止ですよ!!!

具体的には、能力や成果が正社員と同レベルあれば、非正社員に対しても同等の賃金やボーナスを支給することや各種の手当や福利厚生、教育訓練が受けられる権利を与えることが、厚生労働省が作成した「同一労働同一賃金」ガイドラインになりました。

これらの規定に違反している職場では、裁判よりも容易な行政ADR(裁判外紛争解決手続き)により、労働者が待遇改善の申し立てを行うことができるようになったわけです!

非正社員に対する同一労働同一賃金ガイドライン(一部)

基本給

能力、経験、成果が同じであれば同一賃金を支給する。

ボーナス

正社員と同じ貢献度があれば支給する。

役職手当

正社員と同等の役職内容であれば支給する。

通勤手当

正社員と同条件の金額を支給する。

深夜手当、休日出勤手当

正社員と同条件で超過労働の割増額を支給する。

教育訓練について

職務に必要な技能や知識の教育は正社員と同等に行う。

同一労働同一賃金ガイドライン

今後は、パート社員の中でも「店長」や「マネージャー」の役職に昇格したり、正社員と同じ基準でボーナスが支給される職場は増えていくことが予測されます。

一方で、同じパート社員の中でも業務の成果目標や責任を負っている者と、そうでない者との間では、収入に差が生じてくるので、正社員と非正社員の垣根を取り払い、すべての社員を対象とした賃金体系の見直しも進むことになりますね。

逆にいえば、仕事の内容に対して適切な賃金が支払われているのかを測るため基準、調査と分析、監査の仕組みを作ることで、人事管理の方法も複雑になります。

ここに多方面からのビジネスチャンス、つまり宝の山が生まれます。

日本は少子高齢化にで「労働者不足」とよくいわれますが、じつは国内の労働人口は、アルバイト、パート、派遣社員など、多様な働き方をする人が増えているために増え続けていることをご存知ですか?

国税庁の民間給与実態統計調査によると、国内の企業が、従業員に対して支払う給与総額は、2009年に192.5兆円だったのが、2019年には231.6兆円に伸びているのです!

しかし、給与所得者の数も5388万人から、5989万人に増えているため、1人あたりの給与額は伸び悩んでいるという状況なのです。

給与総額 給与所得者 非正規率
2012年 191.0兆円 4555万人 21.6%
2013年 200.3兆円 4645万人 22.3%
2014年 203.0兆円 4756万人 22.9%
2015年 204.7兆円 4794万人 23.4%
2016年 207.8兆円 4869万人 23.7%
2017年 215.7兆円 4945万人 22.9%
2018年 223.5兆円 5026万人 23.2%
2019年 231.6兆円 5255万人 23.1%

※給与所得者には、経営者、役員等も含まれる
※出所:民間給与実態統計調査(国税庁)

ですから、これからの労働市場は、同一労働同一賃金制の導入により給与資金の分配方法が変わって、不当に安価な賃金で雇われていた非正規人材の給料がベースアップされます。

一方で、年功序列で増えていく正社員の定期昇給制度は、見直されていくことになることが予測されます。

この動きは、会社の付加価値の給与再配分といえるでしょう!

トヨタ自動車では、2021年から一律的な定期昇給制度を廃止して、個人の評価によって昇給額が変わる新賃金制度へ移行しています。

昭和の高度成長期から平成初期にかけて、賃金の定期昇給が年率5%のペースで行われてきましたが、非正規の労働力が台頭してきた2000年頃からは、定期昇給率が年率1%台に落ち込んでいます。

昭和と比較して、令和の時代に正社員として勤めるサラリーマンの賃金条件はかなり悪くなっており、高年収は自分の実力で掴み取るしかないのが現実です。

平均賃金の年間定期昇給率

  • 昭和57年(1982年)…12,802円(年率7.0%)
  • 昭和60年(1985年)…10,218円(年率5.0%)
  • 平成元年(1989年)…12,085円(年率5.3%)
  • 平成5年(1993年)… 9,711円(年率3.7%)
  • 平成10年(1998年)… 6,079円(年率2.3%)
  • 平成15年(2003年)… 3,064円(年率1.0%)
  • 平成20年(2008年)… 4,417円(年率1.7%)
  • 平成25年(2013年)… 4,375円(年率1.5%)
  • 令和2年(2020年)… 5,423円(年率1.9%)
    ※出所:厚生労働省

もう一つ知っておくべき賃金格差の問題を日本の企業は抱えています。

世界経済フォーラム(WEF)では、「The Global Gender Gap Report 2018」の中で、男女格差の度合いを示したジェンダーギャップ指数を公表していますが、日本は149ヶ国中で110位という不名誉な結果となっています。

雇用の平等が重視される欧米でも、男女の間には歴然とした賃金格差があるのが実態で、同一賃金国際連合(EPIC)によると、世界では男女で平均20%の賃金差が生じているそうです。

法律的には、男女差別が禁止されている中でも、賃金に格差が生じている理由としては、女性は家事や育児によって断続的な就業パターンになっていることや、社会的地位の高い職種では、いまだに男性の占有率が高いことなどが挙げられています。

とくに、日本の男女格差は非常に大きくて、男性の平均年収が540万円に対して、女性は296万円と、1.8倍もの差が生じています。

女性は勤務歴が長く、経験や専門知識を積んだとしても、年収が300万円台から伸びていかないのが特徴で、女性役職者(課長以上)の割合も12.5%と、世界の平均値(約30%)よりもかなり低い水準です。

主要国のジェンダー不平等指数

※指数が高いほど男女格差は低い

  • 1位:アイスランド……0.858
  • 2位:ノルウェー………0.853
  • 3位:スウェーデン……0.822
  • 4位:フィンランド……0.821
  • 12位:フランス…………0.779
  • 14位:ドイツ……………0.776
  • 15位:英国………………0.774
  • 51位:米国………………0.720
  • 103位:中国 ……………0.673
  • 110位:日本 ……………0.662
  • 115位:韓国 ……………0.657
    ※The Global Gender Gap Report 2018

メンバーシップ型からJOB型の雇用形態に大きく変わる雇用関係

今後は日本でも欧米型のJOB型雇用が広がっていくでしょう。

メンバーシップ型雇用→従来の日本の会社の雇用形態

業務:業務内容の範囲は明確に決まってない。ジョブローテーションがつきもの
給与:職能給で給与を決めるのが一般的。職能給は勤続年数や役職で判断されることが多い
勤務地:勤務地や配属は限定されない。転勤がつきもの
教育:長期雇用が前提のため、会社が人材を育成する

JOB型雇用→欧米型の雇用形態

業務:ジョブディスクリプション(職務記述書)に書かれていない仕事は原則としてしない
給与:職務給で給与を決める
勤務地:勤務地は限定。転勤は原則ない
教育:即戦力として起用されるため、スキルは個人で身につける

ポイントは職務給か職能給かというところです。

職能給:職務給
評価基準:職務遂行能力 職務の難易度・責任の度合い
評価基準として重視されるもの:役職、勤続年数 職種、業務の専門性
マッチする制度:年功序列・終身雇用 成果主義・同一労働同一賃金
導入が多い国:日本 欧米諸国
考え方:人に仕事を付ける 仕事に人を付ける
特 徴:勤続年数に応じて高い処遇や手当を受けられる、職務の達成度や実績に基づいて昇格や昇給する

これからは、中小企業の大変さはこういったコンプライアンスやマネジメント面での対応は、大企業並みに社会や行政から求められていくということです。

経営資源が限られる中、中小企業に求められるのは「利益を生み出す新しいビジネスモデル」です。

こういった色々な変化の中で今までとは違った対応やストレスを素早く受け入れて、どんどん新しい仕事にチャレンジしていかないと先は見えてこない時代です。

参照:JNEWS.COM

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