富裕層と貧困層に分かれる起点となった2020年

コロナ前とコロナ後では転職市場は状況が一変した

2019年末まではハローワークの有効求人倍率がおよそ1.5倍の「売り手市場」で推移していたのが、2020年以降は1倍を割り込み、すべての業界で求人数が減少しました。

各業界の求人動向(2020年10月時点)

  • 建設業………………………前年比- 2.5%
  • 製造業………………………前年比-29.4%
  • 情報通信業…………………前年比-28.6%
  • 運輸業、郵便業……………前年比-23.4%
  • 卸売業、小売業……………前年比-32.6%
  • 専門・技術サービス業……前年比-23.1%
  • 宿泊、飲食業………………前年比-38.2%
  • 生活サービス、娯楽業……前年比-35.4%
  • 教育、学習支援業…………前年比-22.1%
  • 医療、福祉…………………前年比-15.1%

※出所:公共職業安定所(ハローワーク)

株式市場は、2020年2月~3月にかけて3割近く下落しましたが、急回復して2020年11月には30年ぶりの高値を付けました。

マスコミでは不況の様相を呈したような話題ばかりが先行していますが、実際にはフェラーリや都心の高級マンションが売れまくっています。

日銀がマネーを増刷したことによって、国内のマネー供給量(マネタリーベース)は1年間で17%増えています。
これだけ見てもバブル期もかわいいものですね。

国内マネー供給量の推移

  • 1990年………… 43.3兆円(昭和のバブルピーク)
  • 2008年………… 88.8兆円(リーマンショック)
  • 2013年…………163.5兆円(アベノミクス政策開始)
  • 2020年1月……514.1兆円
  • 2020年5月……530.8兆円(新型コロナ感染拡大)
  • 2020年6月……544.0兆円
  • 2020年7月……566.7兆円
  • 2020年8月……571.5兆円
  • 2020年9月……587.1兆円
  • 2020年10月……601.2兆円
  • 2020年11月……602.9兆円

※出所:日本銀行

野村総研の調査によりますと、日本では純金融資産(貯金、株式、生命保険などの金融資産から負債を引いた金額)の保有高が3000万円未満の世帯は、全体の78%を占めていて、1億円以上の純金融資産を持つ富裕層はたった2.4%だそうです。

しかし注目すべきことは、日本の富裕層は15年前と比べて127万世帯から221万世帯に増えているということです。

階層別の保有資産と世帯数の推移

2005年
  • 超富裕層(5億円以上)…………… 5.2万世帯( 0.1%)
  • 富裕層(1億円以上)……………… 81万世帯( 1.7%)
  • 準富裕層(5000万円以上)……… 280万世帯( 5.7%)
  • アッパーマス層(3000万円以上)… 702万世帯(14.3%)
  • マス層(3000万円未満)……………3835万世帯(78.2%)
2019年
  • 超富裕層(5億円以上)…………… 8.7万世帯( 0.1%)
  • 富裕層(1億円以上)……………… 124万世帯( 2.3%)
  • 準富裕層(5000万円以上)……… 342万世帯( 6.0%)
  • アッパーマス層(3000万円以上)… 712万世帯(13.2%)
  • マス層(3000万円未満)……………4216万世帯(78.1%)

※出所:純金融資産保有額別の世帯数と資産規模(野村総研)

サラリーマンが中流階級といわれた時代が終焉した

保有資産が1億円以上の富裕層と、3000万円未満のマス層では収益構造が大きく異なっているということが分かります。

富裕層は、事業収入と投資益で資産を増やしているのに対して、マス層の収入源は「給与収入」に依存しているのが特徴だからです。

実際に、サラリーマンの賃金は、過去20年でほとんど伸びていません。

国内の景気が悪いためではなく、竹中平蔵氏が進めた労働改革によって、パート労働者が増えたことにより、一般労働者(正社員)の賃金水準が押し下げられていることが大きな要因だと考えられます。

企業が支給する賃金の総支給額は増えても、正社員とパート社員を合算した給与所得者の総数も増えているため、一人あたりの取り分は伸びないという構造のようです。

給与所得者の数と平均年収

  • 2009年……4,505万人(405.9万円)
  • 2010年……4,552万人(412.0万円)
  • 2011年……4,565万人(409.0万円)
  • 2012年……4,555万人(408.0万円)
  • 2013年……4,645万人(413.6万円)
  • 2014年……4,756万人(415.0万円)
  • 2015年……4,794万人(420.4万円)
  • 2016年……4,869万人(421.6万円)
  • 2017年……4,945万人(432.2万円)
  • 2018年……5,026万人(440.7万円)
  • 2019年……5,255万人(436.4万円)

※出所:民間給与実態統計調査(国税庁)

さらに、2019年以降に起きた「働き方改革」のムーブメントも、サラリーマンの年収下落に拍車をかける“負の力”になりました。

総労働時間の推移から裏付けられるもので、時間外労働を減らす企業が増えたことによって、近年はジリジリと伸びていた給与相場も、2019年の一人あたり月間給与額は6年ぶりに減少に転じました。

一人あたり平均年間労働時間の推移

  • 1970年……2,239時間
  • 1980年……2,124時間
  • 1990年……2,052時間
  • 2000年……1,859時間
  • 2010年……1,798時間
  • 2019年……1,733時間

※出所:労働政策研究・研修機構

残業を敵視する「働き方の質」が重視される社会では、労働時間数をベースとした賃金体系で働き続けるだけで、年収を伸ばしていくことは困難です。

サラリーマンは、給与収入以外に複数の収入源を持つ以外に収入を増やすのは、現実的に無理になっていくということです。

副業のビジネスで得た収入(事業収入)を、株式などで運用した投資益で資産額を伸ばしていくのが、これから一般化していきます。

不動産経営に興味をもつ人も少なくないと思いますが、不動産投資で稼ぐのは、素人にははっきり言って無理だと私は思っています。

大家になっても銀行から数千万単位の借り入れをして、実質利回りで1~2%を稼ぐ、とっても薄利のビジネスだからです。

不動産投資の素人が不動産で収益を上げようとするのであれば、不動産投資に長けている不動産会社をパートナーにしない限り、何十年も借金返済をしているだけの状態で、気がついたら修繕費と家賃の下落で苦しめられることになってしまいます。

だったら、宅地建物取引士の資格を取得して、副業大家をターゲットに情報商材を販売したり、物件を仲介するビジネスを立ち上げるほうが、よほどキャッシュフローがよくなると思う人も増えてくるのではないでしょうか。

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