規模の大きさがプレッシャーになる時代
中小企業の集まりの団体などに顔出しますと、中小企業は儲けるのが大変だと言う論調も多く耳にします。
いかにも、中小企業だからこそ儲からない理由がそこにあるといった論調です。
しかし、経営分析をしっかりとしてみると、全く違うことに気がつきます。
これは、実は古き良き大量生産、大量消費型時代の名残りなのです。
大量生産、大量消費の時代には当然、規模のアドバンテージが発生します。
同じ製品を作るなら、規模の大きいところのほうがコスト安になり、供給量も安定的に確保できますので、少しでも会社の規模が大きい方が経営的には有利だったわけです。
しかし、現在は大きな工場を持っている方が、逆にそれを維持するために生産の稼働率を上げなければなりません。
規模が大きいからといって、決して経営上で有利では無いのです。
実は、総合メーカーと言われる大規模な会社は、時代の変化に対応することに大変なエネルギーが必要なので、ここ数年、相当苦しい状態が続いているところが多いのです。
それと比較して、儲けと言う視点からいえば、専業メーカーの方がはるかに良い業績を残しています。
従業員一人当たりの経常利益で比較するとわかりやすい本当の儲け
この儲けの指標と言う観点から考えてわかりやすいのが、竹田ランチェスターモデルで利用されている、従業員一人当たりの経常利益での比較です。この上場企業の従業員一人当たりの経常利益は、毎年竹田陽一先生のランチェスター経営株式会社で算出しているもので、上場企業で発表されている決算書をもとに、経常利益を従業員数で割ったものを指します。
会社の業績などを見る時に、まず皆さんが気にするのが「売上高」です。
売上高が大きな会社は大企業として存在感がありますが、実際の経営で言えば、売上高が大きいことと儲かっていることとは、別次元の話です。
どんなに大きな売り上げを持っていても、手元に残る利益が少なければ、決して楽な経営では無いからです。
単純に、売り上げ規模に惑わされずその会社の本当の業績を判断するために、ランチェスター経営株式会社では、上場企業の場合は「従業員一人当たりの経常利益」、中小企業の場合は「従業員一人当たりの純利益」を用いています。
経常利益とは税引前の数字であり、純利益は税引き後の数字で純粋に会社に残される金額です。
なぜ、中小企業と大企業では経常利益と純利益として見るところが違うかと言えば、上場企業は規模が大きいので経常利益の後にある「営業外損益」、つまり、本業以外での実績が入り込んでくる影響が大きい場合があるため、純粋に本業の儲けを見るのであれば経常利益で見た方が分かりやすいと言うことです。
これに対して、中小企業は本業以外の営業外損益の影響が小さく本業に特化している場合が多いために、純利益で見る方が良いと言えるのです。
どちらにしても、売り上げ規模と言う観点ではなく、社長や役員も含めた従業員が一人当たり1年間でいくら位の利益を会社にもたらしているのかを見ることによって、業績を現実に近い形で簡単に評価できるメリットがあるのです。
出典
河辺よしろう『小さな会社が利益3倍!10倍!逆転の法則』
ソフトバンク・クリエイティブ株式会社