コロナ禍の蔓延で、最近は会社の事業の柱を担う形で、いくつかの分野に軸足を置いて経営をしようとする動きが活発になりつつあります。
不景気でも、安定収入が見込めるビジネスとして、医療や介護福祉分野のサービスも人気があります。
企業を顧客とするコンサルタントの視点からいえば、病院やクリニックの経営には改善できる点が、とても多いと考えられます。
薬剤の仕入れ単価を下げたり、患者の集客を促すマーケティング、賃金体系や就業規則の見直しなどをして、患者と医療スタッフの満足度と収益性を高めていくことは十分可能です。
こういったビジネスは、国から給付される報酬制度が収入源になることから、「制度ビジネス」と呼ばれています。
医療は年間36億円、介護は11兆円の財源がベースとなった公的報酬制度が組まれているため、その枠内に食い込むことができれば、企業にとって社会貢献と実利を兼ねた事業になるわけです。
とくに最近では、一般の企業が病院経営をする手法が注目されています。
医療機関の経営ができるのは医師の有資格者に限られますが、医療が専門であり、経営のプロではないため、赤字経営に陥っているケースは多いことが指摘されています。
厚生労働省の調査では、一般病院の赤字率は約8割で、黒字経営は2割に過ぎないといわれています。
そこに、コロナ禍による来院者数の減少が追い打ちをかけて、経営難に陥る地域医療法人が増加しているという背景があります。
そこで、最近は一般企業が間接的に医療法人を経営するスキームが登場してきています。
企業が、病院の土地や建物、医療機器、雇用人材などを管理して、病院の実質的な経営を行い、医療法人から家賃や業務委託料などの名目で売上を得るものです。
こういう企業のことを、法人(MS法人)と呼んでいます。
直接的に医療法の規制を受けないため、株式会社として経営することが可能で、間接的には、国から支払われる診療報酬を収入源にすることがメリットです。
つまり、一般企業が病院の経営のアウトソーシングを受けるということです。
MS法人による病院経営モデル
今までは、MS法人は医療法人の節税対策として設立されるケースが多かったですが、最近では医師免許を持たない子や親族への事業承継や、民間企業が医療法人を買収するためのスキームとしても活用されるようになってきています。
竹田ランチェスター理論で行けば「飽和産業」、「衰退産業」は差別化の宝庫といいます。
競争の激しい事業領域よりも、そういった市場は差別化が簡単であるということです。
例えば畳業界。
今や住宅で畳の部屋が減少し畳業界は完全な衰退産業といわれていますが、2020年7月期のランチェスター調べによると、黒字企業で1社平均従業員数17.4人、1社あたりの年商3.25億円の畳業界の一人当たりの年間純利益は、48万円にもなります。
じつは、10年ほど前には、たった12万円ほどの業界だったのです。
飲食店を対象に、畳と襖の深夜修繕サービスで差別化を実現し上場した、TTNコーポレーションが良い例です。
中小企業が取り組む病院経営。
色々課題も多そうですが、医療現場の近未来経営が少し見えますね。
(参照:JNEWS.COM )