イノベーションよりリノベーションを

「中小企業もイノベーションの時代だ」
といったフレーズ、よく耳にしませんか?
実はこれこそ、大きな落とし穴です。

いまの中小企業に必要なのは、「イノベーション(事業改革)」ではなく「リノベーション(事業再構築)」です。

イノベーションとは、これまでの事業をまったくゼロから作り変えることを指します。
この成功確率は極めて低い。

そうではなく、いまの事業を軸にしながらも、新しい発想でビジネスモデルを進化させるリノベーションの視点こそが大切なのです。

素晴らしいリノベーションを成し遂げた企業が広島にあります。
スーパーなどで使われる発泡トレーを製造する(株)エフピコという会社です。

この会社は一時期、深刻な経営難に見舞われました。
発泡トレーの原料である原油価格の高騰と、環境意識の高まりを受けて使い捨て製品への反発が強まったのが、主な原因でした。

エフピコは、原価の抑制と脱“使い捨て”のために何をすべきか考えました。
そして、これまでスーパーに売り渡していたトレーを、使った後に回収するリサイクル事業への転換を考え付きました。

面白いのは、スーパーへのメリットの提供の仕方です。
彼らは、スーパーにお客様が使い終わったトレーをお店に持ってくれば、1枚10円で引き取るサービスを始めることを提案したのです。
これだけ聞くと、「単にスーパーの負担が重くなるだけじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし、スーパーはライバル業者に勝つために、毎週、折込チラシをつくるなど、多額の高額費を使っていました。
ところが、10円換金サービスを実施すれば、確実にお客様はリピートしてくれます。

本当に来てくれるかどうかもわからない宣伝広告に多額の経費をかけるよりも、確実に集客につながる画期的なアイデアではないでしょうか?

しかも、「エコなスーパー」として、企業イメージも向上します。
この提案にスーパーも乗りました。
そして、エフピコは発泡トレーの製造販売企業から、「発泡トレーのリサイクル企業」へと見事に転換を遂げたのです。

これこそ、リノベーションです。
リノベーションのポイントは、「商品」「客層・業界」のどこかを出来るだけ変えないで、ビジネスモデルを深耕することにあります。

エフピコの場合、商品である「発泡トレー」も、客層である「スーパー」も変えませんでした。
発泡トレーのリサイクルを始めることで業界の中の新しいポジションをつくるとともに、「売り方」を変えただけです。
だからこそ成功できたのです。

もし、エフピコが「商品」と「客層・業界」を一新してしまうイノベーションをしていたら、どうなったでしょうか?

市場のマーケティングや顧客情報に基づいた商品開発が必要ですし、新規参入のリスクも考えなければなりません。
マーケティングといっても、単に「お客様アンケート」にあることだけを受け取るようなレベルでは、たちうちできません。
新たな市場を創造するくらいのアイデアも求められます。
しかも、思わぬ弊害やライバルが現れるかもしれません。
成功確率はかなり低かったはずです。

ですから、イノベーションよりもリノベーション。
これを原則にすることを念頭においてください。

出典:河辺よしろう:『社長さん!税理士の言うとおりにしていたら、会社つぶれますよ!』WAVE出版

橋本美穂
河辺よしろう
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