「成果主義」に頼ると限界がやってくる

新型コロナウイルスの感染はなかなか収束することがなく、コロナ不況はますます避けられない状況になってきてしまいましたね。
不景気になると必ず流行するのが、実績や成果をもとにした「能力給」と「人事制度」です。

賃金や人事のコンサルタントは、処方箋のようにこれらのPRに力を入れています。
従業員50人以下の会社であっても、高い料金を払って賃金制度を採り入れる会社が少なからずあります。
中には、従業員が16人しかいないのに、80万円の指導料を払って、成果主義の賃金制度を取り入れた会社もありました。

ところが、成果をもとにした能力給の賃金制度を採用した後、業績が飛躍的に良くなったという会社の話はほとんど聞きません。
結局、何の変化もなくそのままになってしまうケースが多いのです。

実績評価による能力給の賃金制度を採用したことが原因で、社内の人間関係が悪くなったところもあります。
社員は嫌気がさして、仕事のできる人が何人も辞めたり、大事な得意先を持ったまま独立する人がいると、かえって業績は悪くなりかねません。

高い料金を払った上に業績が悪くなったのでは踏んだり蹴ったりもいい所。
あなたの会社がこうならないために、賃金制度に対する正しい考えを持っておく必要があります。

賃金は会社という組織体の中で労働の「報酬」として支払われるものです。
その「労働」はまず会社全体の経営目標と、その目標を効果的に達成する戦略や仕組みなどに「付随して発生」するものです。
それを労働によって実行し、形あるものに変えていくのは、社長も含めて会社で仕事をしている「従業員の役目」になるのです。

しかし、自分の会社に合った目標を定める作業や、目標を達成していくときに欠かせない戦略を考えて決める作業、さらにそれを実行に移すときに発生する労働の三つは、本来まったく別々のものであることを忘れてしまっています。

手や体を動かして行う労働は、誰の目にもよく見えるのに対して、仕事の対象になる目標や仕事の進め方の内容は見えないので、この三つを混同して同一視する人が多いのでしょう。
この混同は、目標の決め方や戦略が根本的に間違っているのを放置したまま、賃金制度でなんとかしようとする原因になっています。

本来社長が責任をもって担当すべき仕事であるものを、従業員の役目と考えて従業員に過大な責任を押し付けたりしていませんか。

賃金や人事のコンサルタントは、「人材ではなく人財だ」と言葉でごまかし、成果主義の賃金制度が業績を伸ばすなどとPRしているのが現状です。

その結果、戦略実力が低い社長程、これらのPRに惑わされ、高い料金を払って賃金制度を採用しようとします。
しかし、賃金制度自体が経営全体に占める割合は2%もないので、業績が良くなることはまずないのです。

日本では個人企業が55%近くを占めています。
こうした個人企業は儲けの100%が社長個人の収入になるのですから、賃金制度を変えることによって従業員にやる気が出て大いに働くのであれば、個人企業の社長は誰でも年中無休で死ぬほど働いていなければならないということです。

そんな人、果たしてあなたの身近にいるでしょうか。

出典:竹田 陽一『小さな会社☆社長のルール』フォレスト出版株式会社

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