お客についで大事なのが、あなたの会社の営業活動を側面から妨害してくる競争相手の情報収集になります。
かつて、トランジスタを使ったラジオが、真空管式のラジオの市場を完全に食ってしまいました。
有力な競争相手は、密かにあなたの会社の主力製品より品質が良いものを、安いコストで製造する方法を研究しているものです。
完成が間近に迫っているようであれば、あなたの会社の生存を脅かす重大な問題になりかねません。
あなたの会社が大事にしている特定の営業地域内に、有力な競争相手の一社がこっそりと販売係を2倍に増やして逆転を狙っているならば、まさに一大事です。
あなたの会社が特別大事にしている営業地域に、競争相手の一社がこれまでにないチラシの作り方や営業方法を考えだしたならば、これも一大事です。
しかも、同業者に気づかれないよう、小ブロックごとに一つ一つ集中してチラシを入れ、顧客を獲得しているようであれば、気づいたときには手遅れになってしまいます。
こうした競争相手の情報も、会社の中にいたのでは決してつかめません。
製造業や卸売業などの業種でお客の情報を集めるには、社長自身が情報の発生源である得意先の会社に直接行くしかありません。
「売りの下心」を完全に抜きにして、得意先の社長や決定権者と会うのです。
そこで、現在どのような仕事に力を入れていて、将来に向けてどのような手を打っているかについて意図的に質問します。
こうすると、得意先が競争相手にどれくらいの注文を出しているか、将来に向けて取り組んでいる仕事の内容までも教えてくれるかもしれません。
競争相手はどのような販売係が行っていて、社長や後継者がどれくらいの間隔でその会社に行っているかも大体分かるでしょう。
競争相手が将来に向けてどのような手を打っているかも、うすうすわかってくるかもしれません。
このように、継続取引型の業種では、社長が売りを抜きにして得意先を定期的に回ると、お客自身の情報と競争相手の情報の2つが同時に入ってくるのです。
それには、何度も通う必要があるとは思いますが、従業員が10人以下の会社では社長自身が販売戦術も担当していますから、定期的に訪問していれば、それなりの情報が入ってくるでしょう。
何らかの変化には、早めに気づくはずです。
しかし、従業員が30人を起こしてくると、販売係、戦術リーダー、社長と、組織の構成が実質上「三階建て」になります。
こうなると、社長自身が得意先を定期的に回らない限り、ほとんど情報が入らなくなります。
社長が60歳を過ぎて出不精になると、この傾向がいっそう強くなるものです。
会社の中が好きな人は、競争相手の動きを無視した独りよがりの経営をする率が高いですよ。
かつてレーニンは、「自らの足を使わないで情報を集めようとするものを官僚と呼ぶ」と言いました。
あなたは決して役人にならないように。
また、小売業や飲食業のように大衆を相手にしている場合は、社長自身がお客をよく観察することが1番の情報収集です。
もう一つはクレーム。
これは、貴重な情報になります。
クレームには、会社の欠点の他に、お客の不満が入っています。
しかし、逆に見ると将来情報にもなるのです。
これ以外では、近くの競争相手の店舗を観察に行ったり飲食店なら試食したりすると、競争相手のメニュー構成や運営のやり方が大体掴めるでしょう。
出典
竹田 陽一『小さな会社☆社長のルール』フォレスト出版