資源も安全保障しっかりしていない日本は、外交交渉では超弱者!

資源も安全保障しっかりしていない日本は、外交交渉では超弱者

日経新聞によると・・・

岸田文雄首相は2022年2月23日、首相公邸で記者団にロシアによるウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認など巡り制裁に踏み切ると表明した。
同地域の関係者の査証(ビザ)発給停止などを挙げた。
ロシア政府による新たな国債や政府機関債など「ソブリン債」の日本での発行・流通禁止も掲げた。

独立承認した地域への制裁措置として1、関係者のビザ発給停止と資産凍結2,輸出入禁止――を示した。

・・・こんな報道がありましたね。

これを見て、あなたは何を思いますか?

「おいおい、それじゃ独立した国への報復だけで、肝心なロシアへの報復ではないだろう!」

こう突っ込む人は、文脈の理解できる人ですよね。

そうなんです、日本は偉そうに「ロシアに対して制裁措置」と威勢の良いことを国民向け(?)に言ってますが、まったくそんなことができる立場ではないのです。

じつは、ロシアと日本は昔からエネルギー分野で協力してきた関係があります。

そう、それは石油とガスです。

日本は、輸入原油のうち約6%を、輸入、天然ガスのうち約9%をロシアから輸入しています。

2016年9月には、当時ロシア経済分野協力担当大臣に任命された世耕大臣が中心となって、8項目の「協力プラン」に基づいてさまざまな取り組みが進められることになりました。

「協力プラン」とは、2016年5月、ロシア連邦・ソチで安倍首相がプーチン大統領との会談をおこなった際、日本側から提示し、ロシア側から高い評価と賛意を示されたものです。
8項目とは以下のもので、エネルギー分野の協力を進めることもここに明記されています。


  1. 健康寿命の伸長 ⇒ ロシアの為
  2. 快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り ⇒ ロシアの為
  3. 中小企業交流・協力の抜本的拡大 ⇒ 日本、ロシアの為
  4. エネルギー ⇒ 日本の為
  5. ロシアの産業多様化・生産性向上 ⇒ ロシアの為
  6. 極東の産業振興・輸出基地化 ⇒ ロシアの為
  7. 先端技術協力 ⇒ ロシアの為
  8. 人的交流の抜本的拡大 ⇒ ロシアの為

このように、日本にとってロシアはエネルギー調達、北方領疏問題を含んだ東アジアの安全保障のファクターになっているのです。

しかし、ここでも中国の存在感が大きくなっています。

東洋経済(2022/01/25)に、今年になってこんな記事が掲載されました。

『ロシア「北極圏LNG」、中国企業が相次ぎ長期契約「アークティックLNG2」の生産計画の3割を確保』
「アークティックLNG2」とはロシアが北極圏で進めている液化天然ガス(LNG)の生産・輸出プロジェクトで、中国の買い手が存在感を増している

という記事です。

1月11日、河北省の民営エネルギー企業の新奥集団と浙江省政府系の国有エネルギー企業である浙能集団の2社は、北極圏の「アークティックLNG2」プロジェクトの事業会社と長期調達契約を結んだと発表した、と記事にはあります。

アークティックLNG2は、ロシア北極圏のギダン半島西部にあるウトレニエ天然ガス田に直結した液化プラントで、同ガス田では1兆4300億立法メートルの天然ガスと9000万トンのコンデンセート(天然ガス生産の際に液状で回収される超軽質原油)の埋蔵が確認されていて、プロジェクトは2019年9月に着工しており、第1期の液化プラントが2023年から生産・販売を開始する予定。

計画では、生産量の80%前後を北極海航路を経由して、中国を中心とするアジア太平洋地域に供給するということです。

天然ガスの輸送には2つの方法があります。ひとつはパイプラインで直接、天然ガスを輸送する方法。
もうひとつは、LNGに加工して輸送する方法で、液化することで気体の状態に比べて体積が約600分の1まで減り、大量輸送や大量貯蔵が可能になります。
日本は天然ガスの産出地とパイプラインでつながっていないため、天然ガスを液化してLNG(液化天然ガス)として、巨大なタンカーで運んでいます。

ですから、当然原油の国際的な価格が上がればLNG輸入コストも上昇するわけなんです。

そして、輸入量はこの10年間で約1.2倍以上に増加していて、これが貿易収支をマイナスに引っ張る要因にもなっています。

世界のLNG輸入量の7割はアジアが占めています。中でも日本は世界のLNG輸入量の約2割を占める世界最大のLNG輸入国となっていますが、1位は中国です。

わが国では東日本大震災以降は原子力発電所が停止したため、原子力をカバーする形で、火力発電所の稼働率が上昇しました。

これらの火力発電所では、液化天然ガス(LNG)の利用が進みました。

さらにCO2排出係数辺りで見るCO2の排出量はLNGの方がクリーンだといわれています。

  • B・C重油
    単位発熱量 41.9 GJ/kl
    発熱量当りCO2換算 0.0715 tCO2/GJ
  • 液化石油ガス(LPG)
    単位発熱量 50.8 GJ/t
    発熱量当りCO2換算 0.0590 tCO2/GJ

日本は、年間8000万トン超を輸入する、世界最大のLNG輸入国です。

ただ、震災直後のLNG輸入増は、当時の原油高の影響を受けたこと、需要が急に増えたことなどにより、欧米諸国に比べて高値のLNGを輸入せざるを得なくなるという結果をまねいてきました。

一方で、2000年代後半に米国で起きた「シェール革命」などにより、平成28年(2016年)からは、米国によるシェールガス由来のLNGの輸出が開始され、日本も翌年から輸入を行っています。

LNGは、地球温暖化対策への関心が高まる中で、比較的クリーンなエネルギーとしても需要増が続いており、今後も世界の需要は拡大する見込みです。

原発を止めている日本は、安全保障の面だけではなく資源面でも外交交渉は弱気になって当たり前なのです。

中国のエネルギー使用量がどんどん増えていくと日本の価格の交渉力は低下するのは必然です。

世界で過去に起きたスタグフレーションの切っ掛けの多くはエネルギーコストの上昇からです。

日本で中小企業を経営する我々もエネルギー政策に目を配っていないと「自社スタグフレーション」になり、コスト体質が知らない間に大きく変わってしまうなんてことも、これからは起こるのかもしれません。

東日本大震災で白紙に戻ってしまった日本のエネルギー政策を、具体的に政治はどのように解決していくつもりなのでしょうか?

エネルギーコストが上昇しても、我々が経営を守ることでできることは色々あります。

中止するだけでは会社がつぶれてしまいますので、常に新しいビジネスモデルを考えていくことが重要ですよね!

(参照:日経新聞)

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