自動車が電動化するとガソリン価格が上昇して国同士のエネルギー争奪戦になる?!

EUでは今年、EV車を充電するための石油タービンの発電機がバカ売れ中!

EV車が普及するために必然なことは、SMR(スモールモジュラーリアクター)の普及が必須になります。

SMRとは、簡単に言ってしまうと「小型原子力発電所」です。

現在のような大規模なものでないので冷却も簡単にでき、安全性と効率を高めることが期待されていて、先進国を中心にその開発が進められています。

SMRが普及して国内のおける電力供給の点でEVを利用しても、充分電力が賄えるようになれば、その後の世界はどんな景色になるのでしょうか?

EV普及による自動車産業を取り巻く大きなビジネス環境の変化

今のところ、EV車が普及すると、以下の3つのことが常態化する可能性が高いのです。

  1. ガソリンの値段の高騰
  2. 中古自動車市場の衰退
  3. バッテリーは交換方式が主流になる

では、一つ一つ見てみましょう!

1.ガソリンの値段の高騰

原油価格は一部の産油国によってコントロールされているため、EVの普及によってガソリンの需要が減れば、生産量を減らして価格を引き上げることで、利益を確保しようとすることが予想されますね。

一方、消費者はガソリン価格が高くなるほど、EVへの乗り換えを検討するようになるため、地域のガソリンスタンド数も減少して、ガソリンを入手すること自体が難しくなっていく可能性は高いと思われます。

そしてまた、ガソリン価格の変動要因は産油国の生産調整だけでなく、各政府の税率引き上げにより高騰していく可能性も高いですね。

世界では、ダボス会議などからの提案によって「脱酸素社会」を目指した動きが活発化して化石燃料の抑制を目的とした「環境税(炭素税)」を導入する動きが加速しています。

すでに、フランス、スイス、フィンランドなどの欧州諸国では、ガソリンと軽油に対する課税率を毎年引き上げてきている状態が続いていて、この動きはさらに加速されると見られています。

2.中古自動車市場の衰退

アメリカで自動車業界の市場調査や新車レビューを専門とする「CarGurus」が、2021年に行ったEV購入についての意識調査によりますと、マイカー所有者の30%は今後5年以内にEVへの乗り換えを検討しており、10年以内では50%以上が検討することになるだろうと回答しているそうです。

ガソリン価格に占める税金割合(2020年)
  • フィンランド……72.6%
  • 英国………………71.1%
  • フランス…………70.8%
  • イタリア…………70.4%
  • オランダ…………69.5%
  • スウェーデン……69.3%
  • ドイツ……………69.1%
  • 韓国………………57.6%
  • 日本………………52.9%
  • 米国………………24.4%
    ※出所:財務省

さらに、ガソリン価格が1ガロン(3.7リットル)あたり4ドル上昇した場合には、EVの購入可能性が27%高くなり、5ドルの上昇で57%、10ドル以上の上昇で92%高くなるというアンケート結果もあります。

当然、化石燃料と違ってバッテリーの蓄電能力は携帯電話のように年々劣化しますので、EVの時代にはマイカーの購入スタイルとして「新車」の人気が高くなることは容易に理解できます。

つまり、中古車は不人気になっていくことは明らかなのです。

CarGurusのアンケート結果でも、これからの10年間でガソリン車からのEVへの乗り換えをする際の購入方法として、希望する選択肢(複数回答)を聞いたところ、新車購入を検討するユーザーは73%であるのに対して、中古のEVでも良いと考えるユーザーは42%と少ないと結論づけています。

検討するEVの購入形態
  • 新車購入…………………73%
  • メーカー認定中古車……45%
  • 中古車……………………42%
  • 新車リース………………19%
    ※出所:CarGurus

現在の自動車販売市場では、新車購入よりも中古車購入の割合が上回っていますが、EVのバッテリー劣化の心配が無く、補助金も利用できるEV新車の購入割合が高くなるのは必然でしょう。

3.日本ではバッテリーは交換方式が主流になる?!

そうなってくると、問題はやはり「充電施設」。

現在は、急速充電と普通充電の2タイプがありますが設置費用が、普通充電が約120万円に対して急速充電はその倍以上掛かり、そこを補助金で埋め合わせをしようとしているような感じです。

日本では、設置場所の問題もあります。

インフラ的に考えると充電の社会基盤の整備は、緊急対応の急速充電器を増やすのではなく、自宅はもちろん、銀行、会社、レストラン、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、生活上立ち寄る施設の駐車場やマンションなど集合住宅に200Vの普通充電コンセントを並べることだと考えられています。

そこに対して、中国の自動車最大手で上海汽車集団の子会社で、独自ブランドの乗用車を手がける上汽乗用車は、電気自動車(EV)「栄威(Roewe)Ei5」に同社初の電池交換式のモデルを追加し、今年発表しました。

通常のEVは、動力源の電池が車体に固定されており、ドライバーは自宅に設置した充電器や公共の充電ステーションを利用して充電するのに対して、電池交換式のEVは電池の取り外しが可能で、電池交換ステーションであらかじめ満充電された電池を載せ替えることで短時間で充電に代えることができます。

中国の企業が、電気自動車(EV)の駆動用バッテリーのサブスクリプションのビジネスモデルとして、バッテリーを所有するものから利用するものにかえる発想です。

EVの車両本体価格から、バッテリー分を差し引いた金額でクルマを購入し、以後はバッテリー交換を繰り返しながら使って、その使用料を支払うというサブスク・モデルです。

EVの車両価格が高かった理由も、リチウムイオンバッテリーの原価が高く、車両価格から初めからバッテリー代を差し引けば、安く手に入れられるだろうという考え方です。

また、EVの課題とされてきたのが充電時間の長さで、急速充電でも30分は掛かるとされています。
バッテリーをパックごと交換すれば、ガソリン給油と変わらない時間で済むということも、メリットといえるでしょう。

しかし、バッテリー交換式には、問題も山積しています。

バッテリー交換自体は短時間でできても、バッテリーを世界の自動車メーカーで共通化しなければ、バッテリーパックの種類をさまざまに用意しなければならないという、現実的な保管の問題があります。

各社がそれぞれのモジュールでバッテリーを設計すると、莫大な在庫が必要な上に、品切れが生じるリスクが発生します。

膨大な量のバッテリーパックを置いておく場所は、それなりの広さが必要になりますし、土地の価格の高い都市部でそうした土地の確保と、事業での収益の折り合いがつくのかどうかがまったく未知数ですね。

それから、交換を終えたバッテリーは充電して、次のバッテリー交換に備えることになりますが、大量の交換用バッテリーに充電を行うには膨大な電力が必要で、交換が集中した場合には充電が間に合わなくなる可能性もあります。

交換場所に、SMRを配備しなければいけないくらいの様相を呈してくるかもしれませんね。

専門家によると、EVに搭載されているリチウムイオンバッテリーは、携帯電話やノート型PCの充電も同じで、電気を使い切ってから満充電するより電力が残っているうちにこまめに充電を繰り返して、満充電にしないで利用するのが長持ちの秘訣だそうです。

つまり、急速充電しながらバッテリーを次々に交換する方法はバッテリーを劣化させやすい使い方でもあるので、バッテリー交換はあらゆる意味でEV利用の最適解ではないとも言われています。

まだまだ、技術的にもサービス的にも現実の生活に密着できるイメージが湧かない上に、日本のエネルギー政策からみても、2030年の100%といった菅総理は分かっているのだろうかという疑問を持つ人も多いのではないのでしょうか?

参照:JNEWS.COM

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