経営の目的、目標作りができない経営者
誰もが、起業するときや新規事業を始めようと考えるときに、ビジョンのような大きな将来目標と中短期の目標を分けて考えるはずです。
しかし、そこで目標設定を間違えてしまい、始めから達成できないよな大きな目標に向かい、具体的な行動計画が作れず、日常業務が戦略のない行き当たりばったりなものになっているケースをよく見かけます。
これは、目的と目標の関係性をよく理解していないから起こる問題です。
目的とは、何かを成し遂げたいという比較的抽象的なことで、広辞苑で見ると、
「成し遂げようと目指す事柄、行為の目指すところ、意図している事柄」
と説明されています。
これに対して目標とは、
「めじるし、目的を達成するために設けた、目当て、的」
と説明がしてあります。
経営で目的と目標を区別しないと、社員に対して意味もなくわかりづらい目標を与えています。
企業の目的と目標は一体何?
企業の目的については、著名な先生やコンサルタントと言われる方々が、様々な表現をされています。
知の巨人と言われたピーター・ドラッカー氏は「顧客の創造である」と述べています。
経営を通して、社会においていろいろ実現していきたい素晴らしい未来というものがあると思いますが、「顧客の創造こそ企業のあげるべき唯一の成果である」と仰っています。
そして、1993年の著書『ポスト資本主義社会』の中では、
「組織とは、共通の目的のために働く専門家からなる人間集団である」
と述べています。
つまり、「企業経営では、それを続けていくことによって社会が得られる素晴らしい世の中の理想像と、その目的(長期目的)を達成するために設けた目当て(中短期目標)とに分けて考えなければいけない」わけです。
そして企業組織は、大きな意味での目的を達成するために、マイルストーンである目標を達成するプロ集団でなければいけないわけです。
マイルストーンをご存じない方のためにマイルストーンについてお話をしておくと、1マイルごとの道標で、その石を確認する度に1マイル進んだことが目印となり、時間と距離の確認ができるものです。
経営のマイルストーンもこれと同じで、自社の経営の目的に向かって歩きながら、それを1マイルごとに確認できる経営の目標、つまり中短期の計画に当たります。
この経営の目的と目標の違いを理解したら、経営の計画を作るときにいろいろなことがとても分かりやすくなります。
無理に経営理念を作らず、経営目的と具体的な目標を作る
ところが、中小企業の経営者の中には、この目的と目標の分離、さらに経営理念をごちゃ混ぜにして、ますますわかりづらいものにしてしまっている人も多く見受けられます。
経営理念を、最初から確固たるものとして持ちながら、経営に取り組める人は本当に一握りの経営者だけです。
多くの経営者は日々の自分の活動の中で、自分の経営理念というものを少しずつ作り上げていくものです。
もし現在、ご自分の経営に理念というものが見当たらないのであれば、とりあえず経営理念のところは空白にしておいて、まずは具体的な経営の目的、目標(経営のマイルストーン)作りから取り組み、しっかりと時間をかけて経営理念作りに取り組んでいったほうが、会社の業績を良くするには効果的です。