毎年1月や4月に開かれる大型のセミナーに参加すると、必ず評論家が出てきて、
「この商品は将来3000憶円の市場となる、あの商品は将来5000憶円の市場になるので儲けも多くなる」
と話をします。
こういう商品は、たいがい不特定の大衆が使う商品になります。
人は自己中心に考える「欲の深さ」を持っていますから、こうした話に乗って経営規模が小さな会社であっても、「大衆を相手にした市場規模が大きな商品を扱えば儲けも多くなるはずだ」と強く信じ込み、実際これらの商品を扱う人が多くなります。
携帯電話の代理店などがこの典型です。
当時30代、40代の社長と名刺交換すると、三人に一人は「〇〇通信の代理店」と印刷されていました。
そして毎日のようにチラシが入り、売り込みの電話も連日かかってくるのでウンザリしました。
ところが市場規模が大きな商品には必ず大企業が参入してきますから、営業競争と値引き競争がとても激しくなっていきます。
経営規模が小さな会社が大きな市場で営業していると、大きな会社から強い圧迫を受け赤字となり、やがて業界から会社が消えていきます。
携帯電話の販売で、小さな店舗を出していた会社のほとんどは業界での地位がビリで「牛の尻」となり、しかも赤字続きで牛の尻についた「ふんくず」と同じになった挙句、結局業界の肥やしとなってしまいました。
商品対策の目的は、市場規模が大きな商品を扱っているかどうかにあるのではなく、1位の商品を持っているかどうかにあるのです。
1位の商品を作るには、まず競争力がある「強い商品」を手に入れなければなりません。
そのためには、どの商品を強くするか、重点商品をはっきり決めることが必要です。
重点商品の決め方が正しいと、努力に無駄がなくなりますから、小さな会社の業績が良くなるのです。
重点商品を決めるときのポイント
- 賢い将軍はまず戦わずして勝つことを考え、次に勝ちやすきに勝つことを考える(孫子の兵法の教訓)
- 「鶏口となるも牛後となるなかれ」(『戦国策』の教訓)
- 目標の規模に合わせよ(近代軍事の教訓)
これらの教訓から出てきたのが「小規模一位主義、部分一位主義」の目標の定め方になります。
では、どのような手順で商品を決めていけばよいのでしょうか。
それは、今までにない商品を作ることです。
孫子の兵法の「戦わずして勝つ」の教訓と一致しますから、小さな会社やこれから起業する人にとってはとても有効な方法になります。
しかし、今までにない商品は果たして予想通り売れるかどうかわかりませんし、どんなに性能が良かったとしても、お客にはその内容が全く分からないので当然不安になります。
こうした難しさはあるものの、競争相手がいないので、たとえ経営規模が小さかったとしても強い会社から妨害を受けることがなく、思い通りの販売活動ができます。
競争相手がいなければ値引き競争もないので、必要な粗利益もきちんと確保できます。
では、どのような方法で実行していけば、今までにない商品が見つかるでしょうか?
その方法は、
- あなた自身が仕事や生活の中で「こういうものがあるといいが、ないのでとても困った」という商品やサービス
- ある会社に「こういうものを作ってくれませんか」と頼んだが、誰も相手にしてくれないので「強い憤りを感じた」
という2つの思いから生まれます。
シンデレラ商品を探せ!
今までにない商品の次に、かなり有望なのが「シンデレラ商品」というものです。
シンデレラ商品というのは、広告は勿論、営業も全くしていないのに、どこからか注文が入ってきて、少額ながら一定の量が売れているという商品です。
アメリカの天才コンサルタントのピーター・ドラッカーは、こうした商品を「シンデレラ商品」と名付けました。
あなたの会社でシンデレラ商品があるときは、まず注文してくれた会社を訪問します。
そして、どのような用途で、誰が、どのように使っているかを聞いてみることです。
調査から一定の需要があり、しかもその商品があなたの性格とも一致している事が分かった場合は、主力商品として検討してみる価値があります。
これから起業する人などは、一度相手方の社長に相談し、代金を支払って営業譲渡を受ける方法を考えてもいいかもしれません。
シンデレラ商品は市場規模が小さく、強い競争相手も少ないのが普通ですから、商品に改良を加えて使いやすくするとともに、販売にも力を入れるとうまくいく確率が高くなるのです。