経営計画書を作ろう!

私は、全国の商工会議所などで講演させていただいたときに、いつもこんな質問をさせていただいています。
「経営計画書を作っている社長さんはいらっしゃいますか?」
すると、手を挙げられるのはだいたい3~5%くらいです。
ところが、「過去に作ったことのある方はどのくらいいらっしゃいますか?」と尋ねると、なんと60~70%の方が手を挙げられます。
なぜ、作るのをやめたかと聞くと、口をそろえて、「いくら目標数値を設定しても、まったくそのとおりにならないから、つくる意味がない」とおっしゃいます。
さらに尋ねると、その大半は、税理士を頼りに経営計画書を作っていらっしゃいました……。

こうした声を聞くと、いつも私は暗澹たる思いに駆られます。
なぜなら、企業経営にとって経営計画書は極めて重要なものだからです。
私は、しっかりとした経営計画書を作らずに儲けている会社を見たことがありません。
利益を上げている会社のほとんどすべてが、経営計画書に基づいた経営を展開しています。

経営計画書も作らずに経営をするなど、真っ暗闇の中をロウソクも持たずに歩き回っているようなもの。
それで、「利益」という目的地にたどり着くことなどできるわけがないのです。
それほど、経営計画書は大事なものです。

にもかかわらず、経営企画書を作っている中小企業は3~5%にすぎない。
しかも60~70%の社長さんは、「あんなものつくっても意味がない」とお考えになっている……。
なんということでしょうか。

私には、経営計画書作成支援に乗り出した税理士に大きな責任があると思っています。
なぜ、彼らは「まともな経営計画書」を作る手伝いができなかったのでしょうか?

ずばり、「目標設定」ができないからです。
経営計画書とは、簡単に言ってしまえば、儲かるビジネスモデルを作るために、持てる資源(お金や人材など)を何に投資して、どれだけの利益を確保するかという目標を設定するものです。

この目標を設定するためには、「何を」「誰に」「どこで」「どうやって」売るのかという事が決まっていなければなりません。

たとえば、A社がある主力商品を売っているとしましょう。
取引先は同じ市内で営業している3つの会社。
定期的に営業マンが訪問して商談をしています。

ところが、ここ数年、3社とも取引数が減っています。
ここで経営者は考えなければなりません。

「何を」にあたる主力商品が陳腐化しているため、新商品を開発すべきなのか?
それとも、商圏を広げて取引先を増やして売上減をカバーすべきなのか?
あるいは、訪問営業という売り方をダイレクトマーケティングに変えて営業経費を削減して利益を確保すべきなのか?

つまり、経営判断です。これが難しい。
営業データ、市場動向、取引先の状況、商品価値などを数値的に分析するマーケティングをしたうえで、最後は経営者の「意思」で決断するしかありません。

しかしこの判断ができれば、あとは比較的簡単です。

たとえば、A社の社長が、主力商品は変えず、取引先の新規開拓をしようという決断をしたとします。
となると、営業への投資を増やして売上拡大を図ることになるでしょう。
その結果、「営業経費〇%増、売上〇%増、利益〇%増」といった目標数値が見えてくるわけです。
要するに、目標設定をする際のキモは、経営判断(マーケティングを含む)にあるわけです。
この判断が現実的であれば、“作っても意味のない経営計画書”にはならないのです。

ところが、税理士は「経営のプロ」ではありません。
ましてや「マーケティングのプロ」でもありません。
だから、どのように「経営判断」すべきかについて指導することなどできないのです。

では、彼らはどのように目標数値を設定するのでしょうか。
簡単です。

まず最初に、目標の利益金額を設定してしまうのです。

「御社が利益を維持するためには、これだけの利益が必要です。そのためには経費〇%削減、売上〇%増を実現しなければなりません」という具合です。

バカげているとは思いませんか?
この目標数値に何の根拠があるのですか?
お客様のことが全く目に入っていないではありませんか?
本末転倒もいいところです。

当然、そのような目標数値が実現されるはずがありません。
もし実現したとしても単なるマグレです。
むしろ弊害のほうが大きい。

というのは、この目標数値を真に受けて、経費をガンガン削って、営業マンの尻を叩いた結果、社員の士気が低下してさらに業績が悪化するケースをたくさん見てきたからです。

実現可能性のない数値に振り回される社員の立場になってみてください。
やってられないですよ。

たしかに、税理士は財務分析のプロかもしれません。
だから、決算書をもとに、“それらしい数字”をつくることはできるでしょう。
しかし、決算書というのはあくまで「過去」の数字です。
その数字をどんなにこねくりまわしても、「未来」はみえてこないのです。

東京に中小企業の経営計画を専門にサポートするMAP経営という会社があります。
創業者である高山範雄会長が提唱してきたコンセプトに「未来設計」という言葉があります。

この言葉は秀逸です。
経営計画とは過去の経営分析ではなく、3~5年という中期の「未来」を見据えた「お客様投資計画」(お客様を獲得するための投資計画)に他ならないからです。

私は、この会社が主催する経営計画書作成セミナーに定期的に参加していますが、そこには多くの会計士や税理士もいらっしゃいます。
しかしみていると、最初はお客様づくりの観点が弱く、目標設定もできない方が多いです。

「過去会計」である決算書も重要です。
しかし、その知識だけでは、「未来会計」を生み出すことはできないのです。

橋本美穂
河辺よしろう
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