「経営を構成する大事な要因」をはっきりさせる

人の体は脳を初めとして、心臓や肝臓など大事な臓器で形成されています。
健康を保って良い生活を送るには、これらについてそれなりの知識が欠かせません。

経営も大事な要因によって構成されています。「プロ★社長」を目指して会社の業績を良くするには、まず初めに「経営を構成する大事な要因」をはっきりさせ、次に大事な要因を良い状態にする知識をマスターしなければなりません。

経営の構成要因については経営の全体像で説明しましたが、これを改めて整理すると次のようになります。

1.「商品対策」どの商品を中心に経営をするか?

経営を構成する1番目は、商品または有料のサービスになります。社長の性格や経験、それに自社の経営規模と競争相手との力関係の4つを考えたうえで、どの商品やどの有料のサービスを中心にするか。中心商品の価格はいくらにするか。

さらに商品の種類など商品の幅をどれぐらいにするか、この決定が必要になります。もちろん商品のライフサイクルのチェックも欠かせません。

何年も前から経営している社長からすると、今作ったり売っている商品はあまりにも当たり前すぎるので、別に大きな問題ではないように思えるでしょう。

しかし商品や有料のサービスの種類によって、あとに続く仕事の大半が自動的に決まってしまいますから、中心となる商品と価格、それに商品の範囲の3つの決定はとても大事になるのです。

2.「営業地域対策」どこを営業地域の中心にするか?

経営を構成する2番目は、営業地域になります。自社の経営規模と競争相手との力関係を考えたうえで、どことどこを中心の営業地域にするかと、営業する最大範囲はどこまでにするか、この2つが中心になります。

営業マンがお客を定期的に回ったり、商品を配達して回る訪問型の営業で、しかも1回当たりの取引高が小口になる業種では営業コストや配送コストが割高につくので、中心となる重点地域を決めることと、営業する地域の最大範囲をはっきり決めることがとても大事になります。

小売業や飲食業では立地条件になります。チラシでお客を作る場合は訪問型営業と同じように、自店にとって有利な重点地域と、最大範囲の2つをきちんと決めなければなりません。

もしこうせずに思いつきでチラシを入れると、たいがい7割~8割がムダになってしまいます。

3.「業界・客層対策」だれに売るのか?

経営を構成する3番目は、業界と客層対策になります。
これは商品や有料のサービスを販売する場合、会社を中心にするか、それとも個人を中心にするかになります。

会社を中心にするときは、どのような業種とどのような規模の会社を中心のするかになります。個人に売るときは男性を中心にするか女性を中心にするか、さらにどのような生活スタイルの人を中心にするか、これらをはっきり決める必要があります。

売れるものなら、会社にも個人にも売った方が売上は上がって利益が多くなるように思えます。しかし会社に売る場合とでは営業のやり方が大きく変わるので、営業技術を競争相手以上に高めたり営業のムダを少なくするには、これらをはっきり決めておくことが欠かせないのです。

以上、「商品」、「営業地域」、「業界と客層」の3つが、お客を作るときの「中心的な対策」になります。
もし自社の経営規模から見てこの3つの決め方が根本的に間違っていたら大きなロスが発生しますから、決して業績は良くなりません。

ちなみに経営分析の方法は何通りもあります。しかしいくら分析してもこの3つの決め方が良いか悪いかはまったくつかめませんから、会計の専門家が主張する割に経営分析は実際の経営の役には立たないのです。

4.「営業対策」どうやって売るのか?

経営を構成する4番目は、営業方法になります。営業方法とは前に説明した3つに対して、どのような方法で自社の商品や有料のサービスに関心がある「見込客」を見つけ出し、どのような手順で商品の説明をし、どのようなやり方で実際に商品を販売するかの全社的やり方になります。

見込み客を見つけ出す方法や商品を売る方法には、いくつかの種類があります。
まず訪問によってお客を作る方法があります。次にチラシを初めとしてダイレクトメールやインターネットなど、通信手段を利用してお客を作る方法、さらに店舗の集客力によってお客を作る方法などがあり、そのやり方はそれぞれ異なっています。

これらの決定はあくまでも全社的な仕組として決めるものですから、当然、社長の役目になり、戦術を担当する営業マンに任せるものではありません。

5.「顧客維持の対策」お客をつなぎ止めるには?

経営を構成する5番目は、顧客維持の対策になります。
これは一度取引したお客を失わないよう、お客を守る方法です。商品を買うかどうかについて、100%の決定権を持ったお客から継続して商品を買ってもらうようにするには、まず初めはお客に不便をかけないようにしなければなりません。

そのためにはお客と「接触」するところをすべて書き出し、「お客の立場からみて不便はないか」、総点検してみる必要があります。

次は「競争相手以上に、お客から好かれて気に入られるようにすること」になります。
さらに、競争相手いじょうに忘れられないようにすることも欠かせません。

こうした一連の行動が「顧客維持の対策」になるのです。このやり方が悪いと、お客ができても次々と流出してしまいますから、業績は決して良くなりません。

これらについては拙著『小さな会社は「1通の感謝コミ」で儲けなさい』(中経出版)で詳しく説明しています。

以上、4番目の営業対策と5番目の営業対策の顧客維持の対策は知識になるので形がなく、2つのやり方の善し悪しも経営分析でチェックすることはできません。

6.「組織対策」従業員に力を発揮してもらうには?

経営を構成する6番目は、組織対策になります、ここまで説明してきたことを実際に実行するには、「人の力」が必要になります。

業績を良くするには限りがある人員を、どの仕事とどの仕事に対して、何人ずつ配分し、さらに各人の役割分担をどのようにすると経営力が最も強くなるか、この見極めが必要になります。

もしこれらの見極めが間違っていたら、当然、大きなムダが出ます。

本や講演会で成果主義の賃金制度が説明されていますから、きっとあなたも成果主義の賃金制度には関心があるはずです。
しかし、成果主義の賃金制度はここまで説明してきた、商品、営業地域、業界と客層、それにお客を作る全社的な営業対策と顧客維持の対策の5つが、自社の経営規模に対して正しく決められ、しかも仕事に対する人員の配分と役割分担が正しく決められたときだけ、有効に機能するという大きな制限があります。

実際のところ、これらが経営規模からみて正しく決められている会社は、100社に2社~3社もあれば良い方でしょう。
もし、これらの決め方に大きな問題があるときは、いくら成果主義の賃金制度を採用しても決して業績向上には結びつきません。

もちろん、賃金コンサルタントや社長の中には「成果主義の賃金制度を採用すると、従業員がこれらについて研究して改善するから業績が良くなるはずだ」と考えている人もいるでしょうが、これはひどい役目の履き違えになりますから、念のため。

7.「賃金と経費の配分対策」会社を強くするお金の使い方

経営を構成する7番目は、資金の調達と配分、さらに経費の配分対策になります。

ここまで説明してきたことを実際に実行するには資金が必要になるとともに、経費の投入も必要になります。

業績を良くするには限りある経費を、ここまで説明してきたものにどのような比率で配分すると経営力が最も強くなるか、その見極めが必要になります。

このとき、機会、設備、土地、建物など、製品を作るときに欠かせない生産手段に多くの資産を必要とする製造業を初めとして、在庫や売掛金、それに倉庫や車輌などに多くの資金を必要としる卸売業などでは、限りある資金を、何と何に対して、いくらずつ配分すると経営力が最も強くなって業績が良くなるか、この見極めが欠かせません。

これに対して経営コンサルタントやデザイン会社、それにIT関連や広告業など、知識を中心にした業種では、人の力が中心になって資金の使用はごく少なくなりますから、資金の配分(B.S)よりもむしろ経費の配分(P.L)の方がより重要になります。

しかし資金にしても経費にしても、これらはあくまでもお客を作り出すための手段であって、目的ではありません。

ここまで説明した1~7までの決め方がB.SやP.Lの根本原因になり、これらを実行した結果の記録をとるのが簿記や会計になります。

1~7までを決める社長に簿記や会計の知識があれば申し分ありませんが、これらを決めるときの戦略知識と簿記や会計の知識は直接関係ありませんから、必ずしも特別高い会計の知識は必要ありません。

現在使われている経営分析は製品の生産手段に多くの資金を使い、「生産手段を背景にして粗利益を有利に作る業種」では確かに有効になりますが、資金はそれほど使わず、知識と人の力を中心にして粗利益を作り出す「知識型の業種」では、従来の経営分析はあまり役に立ちません。

ところが現在はこういう業種が多くなっているので、経営分析の方法にも思い切った革新を加える時期が来ています。

しかし現実を見ると経営分析で説明されているのはどれもワンパターンで、60年間まったく変わっていません。これが中小企業の社長が経営分析嫌いになる原因にもなっているようです。

8. 「仕事時間対策」時間を有効に活用する

経営を構成する8番目は、仕事時間や営業時間になります。自己資本が少ないうえに人員にも限りがある規模が小さな会社では、唯一平等に与えられている時間を最大活用しないと、厳しい経営競争に勝ち残ることはできません。

つまり、競争条件が不利な会社の社長は、長時間労働がどうしても必要になってくるのです。

経営を構成する大事な「要因のウエイト付」

前の項目で、経営を構成する大事な要因について説明しました。
「プロ★社長」を目指す人が効果性の高い経営をして業績を良くするには、重要度が高い仕事に対して、人員、資金、経費をより多く投入するのはもちろん、社長自身の仕事時間と関心の2つも、より重要度の高いものに配分しなければならないのです。
実際にこれらを実行するには経営を構成する大事な「要因のウエイト付」をし、重要度の違いを数字ではっきりつかむ必要があります。

もしこうしないで経営をすると「総花主義」に陥って経営力が分散するので、「どこも弱いところばかり」と、ダメな会社になってしまいます。

項目の数が多くなると計算が難しくなるので、「営業地域」、「業界と客層」、「営業方法」、「顧客維持」の4つはひとつにまとめて「広義の営業対策」とします。ちなみに時間は性質が違うので、ここでは除外します。

次に、第2次世界大戦が始まる数年前、アメリカで新しい学問として生まれた「オペレータションズ・リサーチ」(O.R)の方法と、「ランチェスターの法則」を使って計算すると次のようになります。

  1. 広い意味での営業対策 53%
  2. 商品対策(有料のサービス) 27%
  3. 組織対策 13%
  4. 資金対策 7%

合計 100%

「売り7分」に「商品3分」

広義の営業と商品の2つだけに限定すると、営業が「2」に対して商品は「1」の割合になります。つまり、売り7分に、商品3分になるのです。

物づくりが得意な人や技術系の人はこの比率に納得がいかないでしょうが、商品が売れない限りその良さは発揮されないのですから、この比率い間違いはありません。

同じく経理の仕事をしている人や会計の専門家の立場からすると、資金や経費配分のウエイトが7%しかないことには、やはり俺の青春ラブコメ感情的に反発を覚えるはずです。その気持ちはよく解ります。

しかし、資金や経費はお客を作るときに欠かせない重要な手段にはなりますが、経営の目的にはなりません、もしお客を作るときに直接関係する商品、営業地域、業界と客層に対する目標の定め方が間違っていて、しかもお客を作る営業方法も間違っているなら、こうした仕事にいくら資金や経費を配分しても業績は良くなりませんから、やはりこの比率に間違いはないのです。

もちろんこれらは「あれか、これか」の択一型ではなく「かけ算」になりますから、1つひとつのレベルが業界の平均より高くならないと業績は良くなりません。

「お客づくり8分」に「内部関連2分」

次に、広義の営業と商品の2つを加えて「お客づくり関連」とすると「80%」になり、組織と資金の2つを加えて「内部関連」とすると「20%」になります。
4対1です。

このウエイトが示すとおり「限りある人員」で経営を進めて業績を良くするには、賃金制度を初めとして会計の仕事はより簡単にして作業量を少なくします。

こうして浮いた人員をお客づくりの仕事に回すのが正しい手の打ち方になるのです。

実際にこうするには経理の作業が簡単になる「仕組づくり」が必要で、従業員100人までその方法決定と作業は社長の役目になりますから、社長はこれらを研究して同業者よりも腕を高めるとともに、会計係に対してはっきりとした
方針を出さなければなりません。

以上、この項目では、経営を構成する大事な要因の比率について説明しました。
社長が経営を構成する大事な要因を研究して目標の決め方ややり方のウデを高めるとともに、この比率に合わせて資金と経費を配分するのはもちろん、社長自身の関心を仕事時間もこれらに合わせて配分すると、正しい仕事を全員で実行することになるので業績が良くなります。

逆にこの比率とかけ離れた状態で資金と経費が配分されるならば、根本的に間違った仕事を全員で実行することになるので当然業績が悪くなります。

どちらになるかは、すべて社長の研究心と決断力にかかっているのです。

〈参考〉プロ★社長
~98%は社長ひとりの実力で決まる。ランチェスター経営最強の社長学~
著者:ランチェスター経営 竹田陽一 中経出版

橋本美穂
河辺よしろう
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