日本でベンチャー起業をして、直接金融(銀行などの借り入れではなく資金調達をする方法)で、資金調達をする会社は、この20年ほどでかなり増えてきたとはいえ、まだまだ馴染みが少ないのが現実ではないでしょうか?
2008~2010年にかけて投資家向けの情報提供を行う「CB Insights」が、シード段階の資金を調達して創業したスタートアップ企業1,100社を調査したところ、IPO(株式上場)またはM&A(事業売却)に成功したのは全体の3割に過ぎず、残り7割の企業は、追加の資金調達ができずに、倒産または廃業同然の状態に陥っているとの結果が発表されています。
ベンチャー投資が活発なアメリカでも、Uber、Airbnb(エアビーアンドビー)、Slackなどのようなユニーコーン企業(未上場の段階で評価額10億ドル以上)にまで育つ確率は、わずか1%に過ぎない厳しい現実が見えてきます。
とくに日本では、リスクを取るのを回避する傾向が投資家に強いため、ベンチャー企業に投資を積極的にしている企業は今までは少なかったといえますが、ここ10年ほどでかなり変化がみられるようになってきました。
その理由は、大手企業が自社の独自路線での次世代のビジネス構築において、うまく結果が出づらいことと、自社だけでの新規事業には時間が掛かりすぎるなどの理由から、ベンチャー企業のM&Aが盛んにおこなわれるようになったことも、大きな原因として考えられます。
2009年度の国内スタートアップ起業の資金調達額(未上場)は737億円。
会社数では、895社。
つまり、2009年に新しいビジネスモデルを引っ提げて市場に乗り込んできた会社に対して、1社平均9,800万円ほどの市場から、直接金融として資金調達をしていたことになります。
ちなみに、「直接金融」の対義語が「間接金融」で、これは銀行などの金融機関からの資金調達を指している。つまり、「借り入れ」ということです。
「直接金融」とは、株主などから直接資金調達をして、株式などを保有してもらう場合を指します。
日本は2000年代に入るまで、この「間接金融市場」しか起業する際の資金調達方法が無かった、といっても過言ではないような状況でした。
起業しようとすると、まず銀行口座の開設が必要になるのだが、当時は実績がないからという意味の分からない理由で、銀行などがベンチャーを立ち上げようとする会社を完全に門前払いにしていたのです。
本当に馬鹿らしいことをしていましたね。
しかし直近で見ると、2018年度の国内スタートアップ資金調達額(未上場)は3,848億円。企業数は1368社になり、1社あたり平均3億円弱の資金調達が可能になっています。
大企業のM&Aも含めて投資家という局面だけではなく、企業の新規事業としての投資先として、市場が拡大していることは明白ですね。
しかしながら、スタートアップで資金調達ができたとしても、問題は会社の成長に伴って継続的に資金調達が可能であるかということが、特に国内の場合は問題になってきます。
ベンチャー企業は「実績がない」という理由から、継続的な資金調達には、相当な努力が必要になってきます。
「直接投資」だけでは息切れしてしまうので、日本ではある程度のビジネスの実績ができた段階で銀行の出番となります。
ちなみに、アメリカのスタートアップ企業の資金調達状況を見てみると以下のとおりです。
米国スタートアップ企業の生存状況(2008~2010年に創業)
※比率はスタートアップ企業創業時の1100社からの生き残り割合です。
スタートアップ企業創業(1,100社)
│(平均調達額:約7千万円)
↓(約20ヶ月後)
資金調達2回目:534社(48%)/資金調達失敗427社(38%)/出口成功158社(14%)
│(平均調達額:約4億7千万円)
↓(約20か月後)
資金調達3回目:335社(30%)/資金調達失敗118社(10%)/出口成功81社(7.3%)
│(平均調達額:約12億円)
↓(約20ヶ月後)
資金調達4回目:172社(15.6%)/資金調達失敗98社(8.9%)/出口成功65社(5.9%)
│(平均調達額:約25億6千万円)
↓(約20ヶ月後)
資金調達5回目:96社(8.7%)/資金調達失敗54社(4.9%)/出口成功22社(2%)
│(平均調達額:約62億円)
↓(約15ヶ月後)
資金調達6回目:30社(2.7%)/資金調達失敗51社(4.6%)/出口成功15社(1.3%)
・(平均調達額:約130億円)
この数字から考えると、アメリカで起業して約30億円調達し、エグジットできる確率は5.9%程度。
この辺りが確率論からいうと、限界的な水域になるのだろう。
最近では日本でも、クラウドファンディングなどの影響もあり、若いベンチャー起業家を中心に、資金調達の考え方が大きく変化してきている。
しかし、その資金調達の継続性と金額はアメリカと比べると、かなり差がつきそうである。
これから、日本のベンチャー起業はどんどん盛んになっていきます。
優れたビジネスモデルのところには、桁違いの投資が集まりやすい仕組みが絶対に必要になるでしょう。
既存の中小企業にしても、銀行頼みだけの間接金融で「いくら借りられるか」に終始せず、国内だけではなく海外の投資家、今までとはまったく違う資金調達の方法を考える時期に来ています。
資金調達とは、「目的」と「目標」に対しての必要資金のこと。
あなたの会社は、資金調達の目的と目標、実行計画を考えたことがありますか?
そして、あなたの会社も、そろそろ既存の金融機関だけに頼らず、「直接金融」についても考えてみてはいかがでしょうか。
それは、国内だけではなく、海外の投資家からの資金調達について、考えてみるのもいい時期かもしれませんね。