社長は経営がわからないでは済まされない

8つの間違い!「戦略」の意味がわからない?!

経営には怪しいものや意味不明のものがとても多い。その代表格と言えるのが「戦略」です。
とにかく戦略の意味は人によってバラバラに使われています。きっとあなたも「どれが本当の意味だろうか」と、疑問に思われたことが何度もあるはずです。

ビジネス書を読むと、いたるところに戦略の文字が目につきます。セミナーでも〇〇戦略というのがやたらに出てきます。ところが、コンサルタントの中には戦略と戦術の区別がきちんとついていない人も多く、戦略の意味を間違えていたり、まったく別の意味で使っていたりする人がいるのです。

【戦略における8つの間違い】・・・こんな「セミナー」ありませんか?

〈間違い1〉会社が将来に向かって進む方向性≠戦略

長期的な方向性は将来の目標の一部になります。将来目標はあくまでも将来目標で、その目標を効果的に達成する「全体的なやり方」が戦略。

〈間違い2〉目標≠戦略

目標はあくまでも目標であって戦略ではありません。
以前、能力開発セミナーが流行しました。営業的なスキルや情報判断能力を高め、目標をより効果的に達成していくというものです。
セミナーを聴かれた50代以上の方の中には「目標=戦略」と、勘違いしていた人もいたはずです。

〈間違い3〉事業分野の決定≠戦略

どの分野に力を入れるかは「目標の決定」になります。
目標を効果的に達成する全体的なやり方が戦略ですから、経営規模がそれほど大きくない場合、とてもすべてに対応することはできません。

〈間違い4〉戦略的何々という言葉の乱用

目標、戦略、仕組みづくりの3つが、あいまいです。
経営書を読むと「戦略的何々」という文章がやたらに出てきます。その中で多いのが「効果的に」とか「効率的に」という意味のものです。

効果的であるかどうかの対象
  1. 目標の定め方が、自社の経営規模および有力な競争相手との力関係からみて、適切であるかどうか。
  2. その目標を達成する戦略が適切であるか。
  3. 戦略を有効に機能させるために欠かせない仕組づくりが適切であるか。
  4. 戦術が正しく実行されているか。

〈間違い5〉重要なもの≠戦略

重要なものそれ自体が戦略ではありません。
重要なものは、目標の中にもありますし、情報の中にも戦術の中にもあるのです。

〈間違い6〉情報≠戦略

情報は、目標の決定、戦略や戦術を考えるときに必要なものです。
情報は、それを集めようとする人の実力に大きく左右されるために、一見すると情報と戦略が同じであるかのように思えます。

〈間違い7〉戦術でレベルが高いもの≠戦略

元プロのセールスマンだったという人に多くみられるようです。
戦術はあくまで戦術であって、戦略ではありません。

〈間違い8〉会計や資金繰り≠戦略

繰り返しの仕事が戦術です。
簿記や会計は道具を使って繰り返しする仕事ですから、どう考えても戦略にはなりません。

その証拠に「戦略的何々」と書かれた題名の本を5~6冊用意し、「戦略とは」というところをコピーしてみてください。それぞれの内容を比較してみると、そのことがよくわかります。おそらく、内容が全部違っていることと思います。

コンサルタントでさえ間違えているのですから、中小企業の社長はもちろん、ビジネスマンの間でも戦略と戦術の区別がつかず、ひどく混乱しているのが現状です。

この影響を受けて、あなたも「目標、戦略、戦術」の3つの区別がつかず、ひどく混乱した状態に陥っているのではないでしょうか。
この3つの区別がつかないと、商品、営業地域、業界や客層に対して、正しい目標が定められなくなってしまいます。
会社の経営規模によって変わってくる社長の正しい役目も、わからなくなってしまいます。

これでは、仕事の役割分担が混乱してしまう「二次元的な問題」まで生じることになります。

さらに、目標、戦略、戦術の区別がつかないと、業績の何割が社長1人の実力で決まるのかがわからなくなり、油断すると従業員の働きですべての業績が決まってしまうという、間違った思い込みをしてしまうのです。

業績が思わしくないという場合、もとをたどれば戦略と戦術の区別がつかないことに起因している場合がとても多いのです。そういった人は、戦略という言葉の語源に戻って、戦略を「将軍の術」と置き換えたほうが、わかりやすいかもしれません。

!チェック!
あなたはこれまで戦略をどのような意味で使っていたでしょうか。
目標を戦略と言っていたり、重要なものを戦略と言ったりしていなかったでしょうか。

「強者の戦略」を使えば中小企業は自滅する

強者の戦略はカッコいいけれど・・・

「強者の戦略」で経営できる会社は、数ある会社の中で「0.5%」くらいしかありません。

残りの「99.5%」は弱者になります。さらに、この中の40%は競争条件が特別不利な「番外弱者」に区分されます。以上のことを考えたとき、あなたの会社がどちらの戦略をとればよいかは、おのずとわかるはずです。

ところが、本やセミナーで紹介される内容のほとんどは、「強者の戦略」が中心になっています。特に、雑誌や新聞の記者などから経営セミナーの講師になった人は、日本や世界全体の話をすることが多いので、完全に強者の内容になってしまいます。

一流大学から大企業に入社し、その後コンサルタントになった人なども、一流の会社のやり方ばかりを紹介するので、これまた「強者の戦略」が多い。

テレビによく出てくる有名なコンサルタントの話も世界的な話題のため、その内容は「超強者の戦略」になっています。
こうした人の話が実行できるのは、ほんの一部の会社に限られるのです。

しかし、これを一言も理解してくれないから、間違った経営をしてしまう人が多いのです。それもそのはず。こうした評論家やコンサルタントは経営戦略の内容が2通りあるということを理解していないのです。

彼らが書いた本を何冊も読み、セミナーを何回も聴いている社長は、本来弱者として経営すべき立場にあっても、つい「強者の戦略が正しい経営のやり方だ。強者の戦略を実行してさえいれば業績はよくなるのだ」と強く信じ込んでしまいます。

それだけではありません。「あなたの会社は業界での地位が中以下とか番外なので、弱者の戦ルールをしっかり守らないと危なくなりますよ」などと、親切に忠告してくれる人など、1人もいやしません。

人は、強いものやカッコいいものにあこがれるという傾向も、原因の1つです。
競争条件では自分の会社が不利だとわかっていても、つい業界ナンバーワンの会社のやり方をマネしたくなるものです。

これが染み付いてしまうと、何も知らない人に最初から教えるのに比べて「3~5倍」の時間がかかってしまいますから、一度間違って覚えたものを直すのがいよいよ難しくなります。

「弱者の戦略」の話が出てきてもまともに聴こうとしません。そしてまた、「強者の戦略」を繰り返すのです。

年間1人当たり50~200万円の損失?!

本来は「弱者の戦略」で経営すべき会社を、間違って「強者の戦略」で経営するとどうなるでしょうか。

それは、根本的に間違った仕事を全員で実行する結果になるので経営効率がひどく悪くなり、従業員1人当たりの「年間粗利益」が「50~200万円」も少なくなります。

これでは純利益が出てもほんのわずか、ほとんどは赤字になってしまうでしょう。

しかし、「戦略とは見えざるもの」と言われる通り、戦略ミスから生じたロスは目には見えません。むろん損益計算書にも載っているはずもなく、どのような分析をしようがさっぱりわかりません。
こうした損失を何年も出し続けている人が多いのです。

もし戦略ミスから発生したロスを過去10年分合計すると、従業員30人以下の会社であったとしても、おそらく何億円にもなるでしょう。

これだけの金額を従業員の誰かが使い込んだら大騒ぎになるはず。しかし、戦略のとり違いから出たロスは音がしないどころか原因もつかめないために、誰にもわからず放置されます。

これが「全国的な規模」で出ているのですから、日本中の会社の損失を合計すると気が遠くなるような金額になってしまいます。経営とは不思議なものですね。

そんな会社をお得意さんにしているコンサルタントもいます。彼らは従業員教育や新しい賃金制度を提案しますが、大本の戦略が間違っているのですから、業績がよくなる見込みは全くありません。

戦略がわからないあなたも悪いのですが、これをきちんと研究していないコンサルタントは、もっと悪いと言えます。

!チェック!
あなたの会社は強者と弱者、どちらの戦略で経営すべきでしょうか。
これまでの経営のやり方は強者と弱者、どちらの戦略だったでしょうか。

〈参考〉小さな会社★社長のルール ~ランチェスター経営 成功への実践手法~
著者:中小企業コンサルタント 竹田陽一 フォレスト出版

ランチェスター戦略 経営実践塾
著者・出版
講演・コンサル実績
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