経営には形がない

「経営の全体像をつかむ」とは、どういうことでしょうか?
この部分は、理解するのが意外に難しいのです。経営の全体像がつかみにくい理由は3つあります。

  1. 経営の中心には形がないので、とてもわかりにくい
  2. 質が高くなれば高くなるに従って内容が見えなくなる
  3. 誰でも間違った思い込みや誤った先入観を持っており、正しい考え方の邪魔をする

こうしたことが原因で、経営には宗教に負けないくらい怪しい迷信がいっぱいはびこっていて、ひどく混乱した状態になっているのです。ですから、経営は道元禅師の教えにあるように、「こだわらず、とらわれず、片寄らず」の「空の心」になることから始まります。

会社は何で生きているのか?

あなたの会社は、何によって存在できるかを考えたことがありますか?
たとえば、私たち人間の生を考えれば分かってきます。人間は食物から摂るカロリーなどの栄養で生きています。もし必要なカロリーが得られなくなると、体は徐々に衰弱していき、やがて死んでしまいます。

このカロリーが会社にもあります。それは「粗利益」です。

株式会社などの法人企業であろうと、会社という組織体は「粗利益」によって生きています。
人件費やその他の経費はもちろんのこと、借入金の返済も粗利益の中からしか支払うことができません。

もし、あなたの会社に必要な粗利益が不足すると、会社の体は毎月毎月の「赤字」のためにやせていき、やがて経営ができなくなります。
毎年、倒産や廃業が3万件近くも出ていますが、そのほとんどは粗利益の不足が原因で起きているのです。

会社が倒産しないためには、必要な粗利益を安定的に作り出す必要があります。
こうした事実から、会社を経営する社長がチェックすべき最も重要な指標があります。それは「従業員1人当たりの粗利益がいくらになっているか」を早めに押さえ、業界平均のデータを比較しておくべきだということです。
(パート・アルバイトは0.5人で計算)

たとえば、従業員1人当たりの年間粗利益額が500万円以下の業種になると、あなたの生活費は稼げるでしょうが、経営のやり方によほど大きな革新が加えられない限り、将来の事業拡大に備えた「利益の蓄積」はとても難しくなります。

では、その粗利益はいったい「いつ」生まれるのでしょうか?

それは「お客のお金」と「商品か有料のサービス」を交換したときだけです。
お客のお金に手が触れた瞬間に、粗利益の分子が「ポン」と飛び出すのです。

経営を始めると、伝票を整理したり帳簿に記入したりと様々な仕事が発生しますから、こうした仕事をしていれば業績が良くなると錯覚してしまいがちです。

しかし、経理の仕事をいくら熱心にしても、経費が出ていくだけで1円の粗利益も生まれません。

しかも、商品を買うかどうかの決定権はお客が100%持っていて、売る側には1%の決定権もありません。

お客に対して「商品を買うときは私の会社から買いなさい。そうしないとタメになりませんよ」とは、決して言えないからです。

そう考えると、経営で最も大事な仕事は「お客と作り出す仕事」であることが分かるはずです。
どんな会社も、お客がいるから経営ができるのであって、会社はお客がいるからこそ存在できるのです。

とにかく、お客がいなければ話になりません。これは大昔から今日まで、まったく変わらない「不変の大原則」になりますから、しっかりと頭にたたき込んでおいてください。

小さな会社やこれから起業を目指す人にとって最も重要なのは、あなたが考えている商品や有料のサービスに関心がある見込み客を「安い費用で見つけ出し」、その見込み客に「上手に商品を売る仕事だ」ということが分かるはずです。

お客を作るという作業はとても時間がかかります。これから起業する人は3~5年間、とても厳しい状態になることを覚悟しておくべきでしょう。

あなたが経営について考えたり計画を立てたりするときには、お客を出発点にした「お客起点の発想」が欠かせません。これを「顧客感」と呼びます。

どんな業界にも競争相手がいる

経営で忘れてはならない重要なことがもう1つあります。それはどこの地域にも、どんな業界にも、多数の競争相手がいるという事実です。

たとえば、私の地元の同業者、福岡の経営コンサルタントは400社以上あります。

税理士や休業中の人も含まれているのですべてが競争相手ではありませんが、それでも120社を上回っているのは確実です。遠くにある会社でもホームページを作って営業している会社は競争相手になりますから、競争相手の数は予想以上の数だと考えていいでしょう。

このとき忘れてはならないのが、会社と会社の力関係は「2乗比」になるということです。たとえば、経営力が競争相手と10倍の開きがあるとき、本当の力関係はこの2乗比の100倍もの開きになってしまいます。

これでは同じ土俵で競争したら、ひとたまりもなく土俵の外にほうり出されることになるはずです。

2乗比は、これから勉強するために欠かせない数字ですから忘れないでください。

小さな会社に必要な8つの重要事項

経営の全体像をつかんだあとは、経営を構成する大事な要因をはっきりさせる必要があります。経営を構成する大事な要因とは、経営の全体像をもとにして考えれば分かります。

8つの要因について考えよ!

  1. 商品または有料のサービス対策・・・何を中心にするか
  2. 営業地域対策・・・どこの地域を中心にするか
  3. 業界、客層対策・・・どんな会社を中心にするか、誰を中心にするか
  4. 営業対策・・・お客の見つけ方、作り方
  5. 顧客維持対策・・・一度作ったお客の守り方
  6. 組織対策・・・人の配分を役割分担、給料などの処遇
  7. 資金対策・・・資金の調達と資金の配分、粗利益の確保と経費の配分
  8. 時間対策・・・これらを何時間実行するか

何(商品やサービス)を、どの地域(営業地域)で、誰(業界、客層)に対して、どのような方法で販売(営業)し、一度作ったお客はどのようにして維持するのか、さらに仕事をするのに欠かせない、人の配分と役割分担はどうするかといったことです。

また、仕事をするときに欠かせない資金はどこからいくら集め、その資金を何と何にいくらずつ配分するか、必要な粗利益はいくらになり費用の配分はどうするか、1日当たり何時間、1年間に何時間仕事をするかも重要です。

これらの中で、「商品、営業地域、業界、客層」の3つがお客を作るときの直接の対象になります。さらに、あなたが計画を立てるときは、この3つについての「中心」となるものと、「最大目標」「最大範囲」をはっきりさせなければなりません。

〈参考〉
儲けのしくみ、教えます!「ランチェスター経営」がわかる本
著者:中小企業コンサルタント 竹田陽一  フォレスト出版

橋本美穂
河辺よしろう
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