新しい客層の探索:マーケティングの「最初の1人探し」戦略

少し前までは、ターゲットとする客層は「20代女性OL」「40代男性管理職」など、年齢や性別、職業などの属性でわけることができました。

しかし、同じ「20代女性OL」でも、ジョギングが好きだったり、料理が趣味、暇があれば旅行に行くなど、行動や嗜好は多様化しています。

現在は、ライフスタイルの志向性によって客層を分けることが多くなったのですが、境界線が曖昧で種類も多く、傾向をつかむのがより難しくなったと感じています。

最近では経営者の方に、
「どんな人達に指示されたいですか」
「どの業界にあなたの会社や商品について知ってもらいたいですか」
と、お聞きするようにしています。具体的な誰が、あるいは具体的な会社や業界を想定すると、具体的な問題や困りごとが見えてきます。

「いつもこうやって心配するんだけれど、なんとかならないかしら」
「業界では当たり前だけど、実はもっと時間短縮ができるんじゃないか」
といった切り口から入っていくと、逆に客層や業界が見えてくることが多いからです。

新しい客層は「やりたい、でもできない」から見つかる

例えば、お掃除ロボットの売上が好調なのも、
「掃除をするのが面倒だな」
「留守の間に誰か掃除してくれないかな」
「勝手に綺麗になっているといいな」
という願望が商品化されたからです。

兵庫県伊丹市にある畳屋さんのTNNコーポレーションは、店舗の畳変えに営業を3日も休まなければならない、という問題から、客層を一般家庭から和食店や居酒屋に転換して業績を伸ばすことができました。

これまでの常識を疑うところ、無理だと思っていたところに、新しい客層や業界を見つけることができるのです。

新しい客層を見つける上で、いちばん手っ取り早いのは、自分の知っている特定の個人を客層に設定してしまう、という方法です。

◯◯歳の女性で、家族がいて、夫の年収はどのくらいで、どこに住んでいて、子どもはどんな塾に通っていて…
とかなり細かく決めていくのです。ダイレクトマーケティングも同じですが、最大公約数を集めようとしてはいけません。

個人が抱える問題や願望がどこにあるのかに注目し、どのように解決していくのが最善の策かを考えていくのです。

客層に行き着くためには、まず最初の1人探しから

例えば、日本酒のテスト販売をするとします。普通は、飲んでみた味の印象などをお客さんに聞くのですが、どの客層に打って出たらいいか決めかねているような場合は、「なぜ、この人は買ったのか」を追求することが重要です。

そこがまさに「客層」だからです。

たまたま店にあったから、前から欲しかったから、パッケージが可愛いいから…。
理由は何でもいいのですが、誰がそう思ったかがわかると、そこに再現性が生まれます。

ただし、一度聞いたくらいではわかりません。

「なぜですか?」「どうして、うちなのですか?」の「なぜなぜ」を5回は聞きましょう。
「おいしいから」といった肯定的な理由で買う人ばかりではありません。


【販売力とは何か?】
販売力 = 商品力 × 流通力 × 広告
・商品力は基本要素。流通力と広告力は最大化要素。商品力が弱いと意味がない。
※マーケティングコンセプトハウス 梅澤伸嘉先生による


販売しているあなたが大変そうだったから、わざわざ持ってきてくれたから、といった商品とは関係ないことが、案外「なぜ、買ったのか」の理由になっているのがわかります。

要するに、商品を購入してくれる「最初の1人探し」から、すべてが始まるのです。

最初の1社、最初の業界、最初の客層も、すべては1人から始まります。
その1人を見つけるまでの時間は、商品開発の観点から見ると、最低でも3~5年、長い場合は10年かかることもあります。

そこまで頑張れるかどうかと思われるかもしれませんが、お客さんの認知もないままに会社が変わることはありません。社内のすべての人間が理解するだけでも、2~3年はかかるでしょう。ある程度、長期的に見ていく覚悟が求められるのです。

背後の存在が浮かぶまで、再現性のテストを繰り返す

私がコンサルティングをする中で、これまで会社の売上を伸ばして来られたのは、再現性のテストを必ず繰り返してきたからです。

林本店の場合では、全国の酒屋さんに電話をかけて、まずはサンプルを送りました。
その後、しばらくしてもう一度「お試しいただけましたか」と電話します。
そして、「もしよろしければ、よかったら近くに行くのでお伺いします」といって、実際に店舗に向かうのです。
そうすると、相手のお店にいったときに、必ず言われる言葉というのがいくつかあります。
日本酒のヒントだったり、お客さんへのサービスについてだったり、単なるグチのときもあります。また、ある言葉がでると絶対買ってくれないという傾向もわかってきます。
決して数字には現れないところです。このテストを場所を変えて何度もおこないました。

大企業の場合は、大々的にお金をかけたマーケティングを展開してアンケートを取ることができます。しかし、小さな会社の場合は、細かいテストを繰り返すしかありません。
繰り返すことで、ようやく背後にいるお客さんたち、つまり客層が見えてくるのです。

私の体験では、耳の痛い意見を言う相手ほど購入してくれましたし、今でも取引のあるお店が多いです。林本店の客層の1つに、しっかりと加わってくれました。

ただし、何度かのやりとりがあり、商品への意見を何時間も聞かされ、堪えた上でのことですが。それほどに、お客さんの商品への思い入れも強くなっているのでしょう。

【儲けのツボ!】
最初の1人のお客さん、その背後に広大な客層がある

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