社長が知っておきたい『債権譲渡』について

皆さん
こんにちは。弁護士の宮本です。

前回に引き続き民法の改正についてお話しをしようと思います。
今回は、「債権譲渡」についてです。

債権譲渡って何?

そもそも「債権」という用語自体、聞き慣れない方もおられると思いますが、それほど難しい用語ではなく、人が人に対して特定の行為・給付を要求できる権利のことをいいます。

例えば、AさんがBさんに対して50万円を貸した場合、Aさんは、Bさんに対して、貸し付けた50万円の返還を求めることができる権利、すなわち「債権」を持っていることになります。

このような債権は、その債権の性質に反しない限り、自由に譲り渡すことができます。

例えば、上記の例でいうと、Aさんが別のCさんに、この50万円の貸金債権を譲渡した場合、権利がCさんに移ることになるので、今度はCさんがBさんに対して、50万円の貸金の返還を求めることができるわけです。

債権譲渡の制限について

もっとも、当事者間で債権の譲渡を禁止したり、制限する旨の特約(以下、「譲渡制限特約」といいます。)を合意することは可能です。

しかし、改正法は、譲渡制限特約を設けても、その「債権の譲渡は、その効力を妨げられない」と規定して、譲受人が債権者になることを明言しました(改正民法466条2項)。

譲渡制限特約は一般的に債務者の利益を保護するため付されるものである一方、この特約が債権譲渡による資金調達の支障となっている状況があってこれを改善する必要も認められるため、改正されました。

他方、譲渡制限特約の存在を知っていたり、これを重大な過失によって知らなかった債権の譲受人や第三者を保護する必要はありません。

そこで、債務者は、そのような悪意・重過失の譲受人や第三者には、債務の履行を拒否したり、譲渡人に対する弁済その他債務を消滅させる事由をその第三者に主張することができると改正されました(改正民法466条3項)。

このように譲渡制限特約のある債権が譲渡された場合、新たな債権者は、譲受人の悪意や重過失にかかわらず、債権の「譲受人」であり、もはや債権の「譲渡人」には譲渡債権についての履行請求権も、債務者に対する取立権もないことになります。

そうすると、債務者としては、譲受人の悪意・重過失を立証できる場合は別として、常に譲受人に対して債務を履行すれば足りるように思われますが、債権譲渡の有効性に疑義があるような場合には、二重払いのリスクを負うことになります。
そこで、改正法は、債務者に対し、譲受人に譲渡制限特約を対抗出来るかどうかにかかわらず、譲渡された金銭債権の金額相当分の額を供託することを認めました(改正民法466条の2)。

なお,預金債権については,譲渡制限特約の付された預貯金債権が譲渡された場合、特約について悪意・重過失の譲受人との関係では、譲渡が無効となる旨を規定しました(改正民法466条の5第1項)。

以上のように、債権譲渡のためにルールが改正されています。
皆さん、ご注意ください。

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