消費が爆発的に伸びるポイントがある

「消費の爆発点」を見極める

あえて非効率な自前を選択 ~セブン銀行の設立経緯~

「消費の爆発点」とはセブンイレブンの鈴木敏文会長が使われている言葉です。
これは簡単に言えば、消費には量が質に変る変換点が存在するということです。

セブンイレブンがセブン銀行を立ち上げるときには、実は2つの選択肢があったそうです。

1つは、既存の金融機関を傘下において銀行を立ち上げる方法と、もう1つがまったく新しく認可をとって新銀行を立ち上げることです。

当時のマスコミ関係では費用負担も少なく、すでにインフラもある程度整っている前者のほうが同社の経営にとっても経営資源への負担も少なく効率的であるという見方から、自前で銀行を立ち上げることに関しては否定的な見方が多かったそうです。

しかし、その際にセブンが選んだチョイスは非効率でコスト高と考えられていた後者のほうだったのです。
なぜ、セブンイレブンはセブン銀行を作るときに、非効率とも見える自前での銀行設立にこだわったのでしょうか。

それは「消費の爆発点」のことを過去の店舗開発から知っていたからなのです。

一見、すでにあるインフラを利用したほうが経営資源の投資という観点から見ても効率的のような感じがしますが、すでにインフラがあるものになると、セブンイレブンの店舗にATMをおける場所がある程度限られたスタートになってしまいます。

このときセブンイレブンでは、ATMを設置する場所を戦略的に決めていきたかったのです。

市場占有率が26.1%を超えると消費の爆発が起きる

この話を理解するにはランチェスター経営戦略の市場占有率の法則を知る必要があります。

ランチェスター経営の竹田陽一先生によると、どれくらいの占有率を市場で取れば、利益性が良くなるのかと数字的根拠にキチンと道筋をつけたのが、故田岡信夫先生と斧田大公望先生のお二人だということです。

このお二人の先生は1960年に、東京で特許事務所を経営されていた奥村正二氏が書かれた「企業間戦争と技術」という本でランチェスターの法則を知り、それから6か月後に市場占有率の根拠を計算によって導き出されました。

この市場占有率いおいて、特定のところにお客様を集中させて、市場占有率1位になると、利益率が同業他社の3倍から6倍に跳ね上がるのです。

その市場占有率の注目すべき数字は、大まか分けて市場占有率26.1%、41.7%、73.8%という数字なのです。

先ほどのセブンイレブンの例でも、この26.1%という市場占有率の数字に焦点を当てているわけです。

セブンイレブンの出店戦略は業界第2位のローソンとはまったく一線を画すもので、特定のエリアに徹底的にドミナント出店を仕掛けて、その地域での市場占有率を高めることによって経常利益を増加させてきました。

同じ地域でセブンイレブンの市場占有率が大きくなると、当然その地域に出ているライバル会社にとっては知名度や利便性などの面で不利に働いてしまうようになります。

話をセブン銀行に戻しますが、セブン銀行でもこの市場占有率のマジックを使ったのです。

最初はATMの出店数が当然少なく認知度も上がりません。設置し始めの頃は1台のATMの1日の取扱高は約20万円だったそうです。

しばらくそんな状況が続きましたので、マスコミなどはセブン銀行が戦略的に失敗だったという見方で、自前での銀行設立に取り組んだセブンイレブンの戦略ミスを指摘する声も少なくありませんでした。

しかし、そのときセブンイレブンの鈴木敏文会長はまったく心配をしていなかったそうです。

その理由は、鈴木会長は先ほどの市場占有率の根拠を知っていたので、ATMの設置店舗が27%を超えてくれば消費の爆発点を迎えて、1日の取扱高も間違いなく上昇するという確信を持っていたそうです。

驚くことに、実際にATMの設置店舗が増えていき市場占有率が上がってきて、実際に27%を超えると、前述の1日の取扱高20万円だった数字がなんと70万円を超えるようになってきたそうです。

鈴木会長はこの「消費の爆発点」、つまりATMの市場占有率27%を超える状況を早くするために、手間がかかってコストもかかる自前でのセブン銀行設立を選んだということです。

もし第三者の言葉通り、既存の金融機関をコストがかからない状態でセブン銀行に変更していたなら、既存のインフラをベースにしなければならないので、自由にATMの出店戦略が描けないことからコスト高でも自前での設立を目指したのです。

この市場占有率で大切なことが、前にお話をした「商品」「地域」「業界/客層」という対象です。

このどの分野で「消費の爆発点」を作り出す取り組みをするのかという視点です。

どこに焦点を当てて投資をするのか?

自らが「消費の爆発点」を生み出せるようにビジネスを仕掛けていく

あなたの会社で消費の爆発点を作り出すためには、この3つの経営の対象でフィールドを見つけるしかありません。

ちなみにセブンイレブンは「地域」というカテゴリーで市場占有率を着眼点に消費の爆発点を仕掛けているわけです。

セブンイレブンの47都道府県での出店カバー率は約7割強(ローソンは100%)ですが、セブンイレブンの出店しているエリアでの売上げNO.1率も7割強ですから、出店している地域での市場占有率も7割以上を持っているということが言えます。

しかし、先ほどの「商品」「地域」「業界/客層」というところで焦点を当てないで、やみくもに営業活動をして何十年も事業をしていても、永遠に消費の爆発点を迎えることはありません。

業歴は何十年もあるのだけれども、一向に経営が楽にならないどころか、利益を出すのが厳しくなってきているという企業に多いパターンです。

自分自身の会社で取り組んでいる3つの経営の対象で、どうやって自社なりに消費の爆発点を仕掛けていくのかを決めることがとっても大切です。

これを決めないで、単に問い合わせのあったところにだけ営業を仕掛けたり、消費の爆発点が上がらず、労力を使っているほどお客様には喜ばれず、利益も薄い状態で経営をしなければならないという状態が続いてしまいます。

消費の爆発点は、あなた自身が経営の対象のどこかに焦点を当てない限り生まれません。

もし、あなたが自分の会社の業績を良くしたいと真剣に考えているのであれば、自社にとって消費の爆発点を生み出すところというのが何処なのかを真剣に考えて、自らが消費の爆発点を生み出せるようにビジネスを仕掛けてください。

会社の差別化は消費の爆発点を見据えてそこに投資していくこと

多くの中小企業の社長は、この消費の爆発点のことを理解していないので、長年経営をしていても経営の目標設定が定まらず、相変わらずの日々の営業が毎日のルーティーンワークになっていき、マクロ経済の急激な変化や、業界を取り巻く環境によって自社の経営に影響が出ても、ただ手をこまねいている状態になるのです。

この消費の爆発点を理解できると、経営で一番お金のかかる新規開拓にどのように取り組めば良いのかという戦略もしっかりとできるようになります。

会社でかかる経費の7割は一般経費と言われるものではなく、営業に投入される費用です。

消費の爆発点をしっかりと焦点を定めて、営業経費をどういったところに投資すべきかを考えることが、あなたの会社の差別化の第一歩です!

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