製造業、建設業の値上げ要請ラッシュが凄いことになってきました!
先日、クライアントの製造業の社長さんと話をした際に、仕入れ先や加工業務などで付き合っている供給元の製造業からの値下げ要請が半端ない状況になりつつある、と相談を受けました。
下請の会社が要望する値上げにすべて応じると、その会社が1年間で稼いだ純利益が吹き飛んでしまう程のインパクトです!
てーへんなことです!
その理由は…
- コロナ禍によるサプライチェーンからの材料調達費の高騰
- 電気料金の高騰
大きく言えばこの2点。
そして日本の場合は、これに加えて参議院選挙後には岸田総理が計画している所得税、消費税などの増税なんですが、実はこれだけではありません。
日経新聞(2022年5月14日)によれば、岸田総理は次世代送電網や省エネ住宅投資促す財源は炭素税など想定して脱炭素へ基金、今後10年間で20兆円規模を国が拠出する方針ということなんですが、これがメチャクチャな内容。
政府は、6月までに、まとめる新しい資本主義の概要や実行計画で具体化するらしいのですが、財源は赤字国債など国の直接支出は避け、新たな税収や電気料金を用いるそうで、カーボンプライシングはCO2の排出量に応じて課税する炭素税や、温暖化ガスを多く出す企業が排出枠を買い取る排出量取引などを検討していくという「ダボス会議」のカーボンクレジットの負担を企業に強いる準備段階に入っているよう。
これは単純な話ではなく、調達先からの値上げ要請に伴って対応を迫られる中で、地政学、政治的影響で現行のサプライチェーンが大きく変更を余儀なくされ、さらに「脱炭素税」ということで、新しい税金と電気料金の上乗せで、風力発電を大都市に送るために地域を越えた送配電網の整備、省エネ住宅や電気自動車(EV)など、電動車の普及に必要な補助金を確保するらしいのです。
外国や留学生には未曽有の資金提供をする岸田総理は、そのツケをすべて国民の負担で進めるお考えのようですね。
しかし、中小企業にとってはそう簡単な話ではなく、地政学リスクによるサプライチェーンの変更は、自社の販売先に対して原料費の高騰や下請け会社からの値上げ要請に対して理解してもらえるかという問題があります。
当然、部品や加工などをしてもらっている会社は、材料費が高騰してエネルギー費用が上がれば、売値を上げないと逆ザヤになってしまいます。
それは規模に関わらず、どの会社も同じです。
しかし、単純に値段を上げても、最終製品になった時に価格競争力が低下してしまっては、自社のシェアをライバル会社に取られかねない危険性があるので「はい、そうですか」と値上げに応じるわけにもいかない事情があります。
今回の製造業の値上げラッシュでは、コストアップに根を上げた下請会社が「値上げを承諾しなければ取引をやめてもよい」と言い出すところも出始めています。
中小企業にとっても仕入れ値の上昇と、販売価格の値上げをどう折り合いをつけるのかということは、製造業に関わらず大きな問題です。
そんな中でワークマンは、ユニクロやしまむら、ユナイテッドアローズなど、他のアパレルブランドが軒並み値上げに動く中で、PB商品の価格は「現状維持」を貫いています。
その秘密は、新しく始めたキャンプ用品の販売にあるようです。
ワークマンが新しく発売したキャンプ用品は、既存商品のアウトドアウエアなどと同じ生地を使っているそうで、同じ素材を活用してはっ水機能を加えてテントに応用し開発したそうです。
通常の商品と同じ生地をキャンプ用品に使うことで、会社としては生地の使用量が増えるのでオリジナル生地だから、たくさんつくればつくるほどコストダウンになるというのが、値上げをしないですんだ理由のようです。
ワークマンの土屋哲雄専務によれば、値引きはできないが、価格の維持はできるという戦略のようです。
販売方法も原則ネット注文。
さらに店舗受け取りという特殊な販売方法にも関わらず、4900円の「BASICドームテント」は既に約2万点を売り上げた模様で、キャンプ用品全体でも年間販売目標を達成できる見込みだということらしいです。
スタグフレーションが叫ばれる中、エネルギーや資源価格の上昇は色々な条件による要因が複雑に関わっています。
その中でも一番今言われているのが「脱炭素」の動きです。
「グリーンフレーション」という言葉を聞いたことがありますか?
これは脱炭素など環境への配慮を表す「グリーン」と「インフレーション」を掛け合わせた造語で、「SDG`s」などの過度な社会変化によって「物価が上がる」ということを指しています。
「脱炭素」や「SDG`s」は利権商売として世界的にスタンダード化していて、これを進めれば進めるほど資材の調達コストは上がり続けるということです。これに政治的な地政学上のリスクが、世界的な資源不足を背景に拍車をかける時代に突入しています。
そもそも、環境問題自体に真剣に取り組むことは良いことなのですが、最近の「脱炭素ビジネス」といわれるものはかなり「利権」臭いところも多く、その費用負担を一般の消費者や中小企業が負担させられている状況が強まっています。
小泉進次郎元環境大臣が始めたレジ袋の有料化なども、消費者と企業の負担を増やすだけの愚策としての典型例です。
東証二部上場企業のプラスチック袋製造大手の「スーパーバッグ」もレジ袋の有料によって希望退職者を募るという悲惨な状況に置かれています。
「脱炭素」が製造業のコストを大きく上げて、さらに職場を奪いサプライチェーンの再構築が進むことでさらなるコストアップがこれから予想されます。
実際、これは会社だけの話ではなく個人で支払っている電気代などもこの1年間で随分と負担が増えているという実感はありませんか?
【電気料金の内訳】
基本料金 + 電気量料金 ± 燃料費調整額 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金
この再生可能エネルギー発電促進賦課金というのが曲者で、太陽光発電などの新エネルギー開発の負担金としてすべての電力利用者に請求が来ます。
「脱炭素」を強力に推し進めると、こういった訳の分からない負担がどんどん増えていくことになります。
1988年にニューヨークで創業した世界最大級の資産運用会社ブラックロック・ジャパンの有田浩之氏も「脱炭素で資金調達」が大きく変わり、「資本の大移動」が始まるというようなことを日経ビジネスで話されています。
値上げラッシュなのは製造業だけではありません。
建設業なども同じです。
しかし、どんなに企業が値上げをしたところで「コストアップによる値上げ」では、給料も増えないし企業利益も増えるわけではありません。
これからの中小企業は、色々な意味で「脱炭素」への対応を迫られる厳しい状況が待ち構えているといえるでしょう。
あなたはどんな企業戦略を選んでいくのでしょうか?
参照:日経新聞・日経ビジネス