定型約款とは?改正民法による約款対応の実践ガイド

皆さん
こんにちは。弁護士宮本です。

前回に引き続き民法改正についてお話しをしようと思います。
今回は、「定型約款」についてです。

定型約款って何?

そもそも「定型約款」という用語自体、聞き慣れない方もおられると思います。
しかし、宅配約款、保険約款、請負約款等現代社会では、様々な約款が利用されています。
約款は、大量取引を合理的、効率的に行うため、いちいち条項を確認しながら合意内容を確定せずに、予め定められた画一的な契約条項に拘束力を認めるところに意義があります。
しかし、契約を締結する前に約款を読み込むような人はまずいません。それにもかかわらず、約款があるというだけで、常にこ約款に拘束してよいでしょうか?
また、約款に記載されていることは、どんな内容でも効力を認めてしまってよいでしょうか?
ような問題意識から今回、民法改正により規定が設けられました。

定型約款制度へ対応ポイント

定型約款について対応ポイントは

  1. 定型約款を契約内容とすることを明確に表示すること
  2. 顧客利益を害する条項が入っていないかを確認すること
  3. 定型約款内容表示方法を決めること
  4. 定型約款変更に関するルールを明記すること

です。

1 定型約款を契約の内容とすることを明確に表示すること

定型約款の個別の条項について、事業者と顧客間で合意をしたことが認められるためには、以下のどちらかの要件を満たすことが必要です。

  1. 定型約款を契約内容とする旨の合意をすること
  2. 定型約款を準備した者が予めその定型約款を契約内容とする旨を相手方に表示していたこと

したがって、事業者としては、不特定多数の顧客から受領する契約の申込書等には、見やすい箇所に、
「当該申込みにかかる契約の内容については、・・・約款にて定める」
「本取引には・・・約款が適用されます」
などといった文言を入れておくことが最低限必要です。

2 顧客の利益を害する条項の有無を確認すること

顧客の利益を一方的に害する条項が利用規約の中に含まれている場合は、それを削除するか、あるいは顧客に個別にその条項についての同意を得るかのいずれかの対応が必要です。
すなわち、上記の要件を満たす場合には、顧客は定型約款の内容に同意したものとみなされますが、どのような内容の約款でもそのような合意擬制の効果が認められているわけではありません。

不当条項規制

不当に高い違約金やキャンセル料を定めた条項、事業者側の不当な免責・賠償金額を定めた条項

不意打ち条項規制

定型取引とは無関係な商品のセット販売を規定する条項、定型取引の商品には予測できないようなサービスが付帯しているような条項
については、合意が擬制されないため、当該条項を削除するか、条項を抜粋し、個別に同意を得るなどの対策が必要となります。

3 定型約款の内容の表示方法を決めること

改正民法では、事業者は、顧客から請求があった場合、遅滞なく、約款の内容を顧客に示さなければなりません。
事業者がこの義務を怠った場合には、事業者と顧客間の契約に当該約款の内容を含めることができません。もっとも、あらかじめ約款を交付している場合や電磁的記録(メール等)で約款の提供を行っていれば、改めて内容を表示する必要はありません。
このような規定もあるため、事業者としては、顧客から請求を受けてからではなく、予め定型約款の交付をしておかなければなりません。

4 定型約款の変更に関するルールを明記すること

定型約款も、時の経過や事情の変更により内容を変更する必要性が生じます。
しかし,一方が勝手に内容を変えることができてしまうと不平等です。
そこで、改正民法には、定型約款の変更のルールが規定されています。
具体的には、

  1. 変更が相手方の一般の利益に適合するとき、
  2. 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、約款の変更をすることがある旨の定めの有無、その内容その他変更に係る事情に照らして合理的であるときは、このような変更後の定型約款について合意があったものとみなされ、個別の合意は不要です。

ただし、顧客の同意を得ずに約款の変更を行う際の手続きとして、不意打ち防止のため以下の事項が義務付けられています

  1. 変更後の約款の効力発生時期を定めること
  2. 変更後の約款の内容と効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知すること
ランチェスター戦略 経営実践塾
著者・出版
講演・コンサル実績
PAGE TOP